「ロケット向け熱電池」生産能力5倍に、GSユアサが布石打つ
ジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)はロケット向け熱電池の生産体制を増強する。2029年3月期までに京都市南区の生産拠点に投資し、熱電池の生産能力を現状比で最大5倍に高める。23年は世界のロケット打ち上げ数が年間212回(22年は178回)になり、過去最大を記録。人工衛星の打ち上げ増加を背景に、電池需要が拡大することを見据えて布石を打つ。 【写真】GSユアサが手がける熱電池 ロケットや潜水艦、航空機向けなどの特殊電池を手がける子会社、ジーエス・ユアサテクノロジー(GYT、京都府福知山市、並河芳昭社長)が熱電池を増産する計画。最新の製造装置などを導入するほか、老朽化した生産設備も更新する。投資額は非公表だが、並河社長は「従来を上回る投資を検討している。(生産能力は)現状比3―5倍に拡大する」という。 熱電池は長期間の保存に耐え、瞬時に大電流の放電が可能な1次電池。広い温度範囲で使用可能で、優れた耐振・耐衝撃性能を持つ。ロケットに搭載される姿勢制御機器の電源用途などで使用される。三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発し、6月に打ち上がったH3ロケット3号機にもGYTの熱電池が採用された。 ロケット向け電池を含む特殊電池などの関連事業の24年3月期売上高は前期比9%増の約215億円、営業利益は同2倍の約32億円となった。中長期的な熱電池需要の高まりを視野に入れ、生産体制の整備を急ぎ、成長を目指す。 経済産業省が3月に公表した資料によると、グローバルな宇宙ビジネスの市場規模は現状約54兆円で、40年までに約2・5倍の140兆円になる見通しだ。加えて日本の防衛力強化政策に伴って、防衛用途でも航空宇宙関連の部品需要の拡大が期待されている。