なぜホンダは「短距離走行モビリティ」を開発したのか? Honda CI開発責任者に聞いてみた!
なぜホンダはCiKoMaを開発したのか?
「Honda CIマイクロモビリティ」のCiKoMa誕生の背景について、開発を指揮する本田技術研究所 先進技術研究所の安井裕司さんに話を伺った。 「研究所で、2030年以降の新しいモビリティの提供について考えた際に、電車で移動したり、東京駅や表参道などの若者が集まる場所に出向いたりしてみました。そうすると、人が移動する距離って意外と短いことがわかったんです。タクシーの平均移動距離でも、都心で3.3km、地方でも4.5kmなんですよ。 それまでは都市間の移動を楽にすることが重要だと思っていましたが、実は、日常での短距離移動の方が凄く重要なんじゃないかという話になりました。短い距離の移動なら、大きいクルマも要らないし、乗り捨て可能ならば都市部で直面する駐車場問題もなくなる。そもそもタクシーだって、乗る時は1人か2人ですよ。そこから、小型電動モビリティに取り組むことになりました」 なぜホンダは地図機能に頼らず、短距離走行に適したマイクロモビリティの開発にこだわるのか? そこには、ごく短距離しか歩けない高齢者や、片時も幼児から目を離せない親の存在などがある。このような人たちにとって、カーシェアのようなサービスですら“クルマの出し入れ場所まで距離が遠い”と感じており、ここに見落とされがちなニーズがあるという。 安井さんは、市街地から高速道路まで走行可能な完全自動運転車を実現するならば、ホンダの基準で2040年頃になるだろうが、低速で街中の移動に特化させたCiKoMaならば、2030年頃にはできるのではないかと話す。 日本の幹線道路での最高速度は60km/hが上限だが、住宅地などでは30km/hまで落ちる。現状でも車道でのCiKoMaの走行速度は20km/hを想定しているため、開発が進めば、住宅地などでの完全自動運転の実現はそう遠い目標ではないのだ。 また、Honda CIの能力をさらに監視機能に特化させることで、事故を防ぐ機能を搭載できないかというユーザーからの声もあり、安井さんは完全自動運転の実用化の前に、事故防止機能の実用化にも力を注ぎたいとした。