女子アナの「王道」から外れてしまった神田愛花 彼女には自分の道を歩んでほしい
クセになる独特の世界観
無駄な感情を持てない故に泣けなかった卒業式、老化した膝とシャネルのミニスカートとのせめぎ合い、計画性のみを持って臨んだファーストキスの懺悔、NHKに入局し、初の一人暮らしで家賃滞納に陥った衝撃の理由。育ちの良い母や、夫・バナナマン日村など、同じく変わり者である家族たちとのやりとり。本末転倒な散財をしてまで、航空会社の最上位ステイタスを維持する理由。MCを務める番組で、海外旅行土産を上手く配るための壮大な計画。業界で流行のメイクを安易に取り入れた末の惨劇……。天然などという既存の概念にはとても当てはめられないエピソードの数々。自分の中で、うまくいったことも、そうでないことも、全て理論的に分析し、自戒し、次への布石にしていく。読み進めるうち、自ら描いたキュビズムのようなイラストも含め、その独特な世界観が、なんだか爽快でクセになってくる。 フジテレビ「ぽかぽか」司会のオファーから決定のくだりなど、なかなか知れない芸能界の裏事情は、通常なら書くのはタブー視されるような内容だが。そんな風習すら凌駕し、昇華させてしまう力が、彼女にはある。読後は誰もが、共振していることだろう。 変人力。漲るこの源を頼りに、これからも自分の道を歩んで欲しい。続く者は誰ひとりいない、王道とは全く異なる、その道を。
今井舞(いまい・まい) 東京生まれ。小学校から大学まで、バカばっかりのエスカレーター式女子校にて、観察眼を鍛えながら過ごす。大学在学中にライター業を開始。美容を中心に、ファッション、インタビューなど、何でも屋として活動中に、タレント格付け本『女性タレントミシュラン』(情報センター出版局)を出版。裏バイトで始めたつもりのテレビ批評がいつの間にか生業となり、現在に至る。 デイリー新潮編集部
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