「A型事業所で釣ってB型に流す」だますような手口 「個人の連絡先の交換は禁止」という規則が横行
厚生労働省の調べでは、2022年度のA型事業所の平均給料は月8万3551円なのに対し、B型事業所の工賃は同1万7031円。工賃を時給換算するとわずか243円である。中には雇用契約がないことをいいことに、B型事業所で“労働搾取”にはしる悪質な業者もいる。 早々にB型事業所に移るよう持ち掛けてきた事業所に対してタミオさんが不信感を抱いたのはこうした背景があるためだ。タミオさんが憤る。 「仕事は箱折りやお菓子の検品でしたが、単価が低くて採算は取れてへんやろうと思ってたんです。だから『僕が営業して仕事をとってきましょか』と言うても、職員は『必要ない』という。経営努力もせんと、『もうかれへんからA型やめて、給料を払わなくてもいいB型にします』なんてことがまかり通ったら、なんでもありになってしまいますよ」
案の定、別の利用者から「社長は『B型では最低賃金を保障し続けることはできない』と言っている」と聞いた。この利用者が「今回の話は解雇通告なのか、退職勧奨なのか」と社長を問い詰めたところ、「案内です」という意味不明の答えが返ってきたという。 私の取材実感では、A型事業所の利用者の中にはその給料で生計を立てている人が少なくない。タミオさんもそうだ。彼らにとって、事業所の閉鎖は失業と同じことだ。 ■B型で働かせるために集めた?
タミオさんは高齢者の入居施設で働いていたときにうつ病を発症した。正社員だったが、年収は約250万円。夜勤も多く、仕事に見合った待遇とはいいがたかった。発症を機に退職し、一時的に生活保護を利用した後、数年前から複数のA型事業所で働いてきたという。現在の収入はA型事業所の給料と障害年金を合わせて13万円ほど。持ち家なのでなんとか暮らしていける水準だ。 タミオさんは「A型では有休を使って病院に行くこともできましたが、B型ではそれもできなくなります」と訴える。タミオさんにとって、A型かB型かの違いは大きい。「案内」などという言葉でお茶を濁されてはたまったものではない。