風の彫刻家・新宮晋が未来に託すもの ミュージカル『風のサンダリーノ』が伝える、地球の素晴らしさ
平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、彫刻家の新宮晋(しんぐう・すすむ)さんが出演。自身が力を入れている活動を紹介したほか、今月27日(日)に兵庫県立有馬富士公園で行われるミュージカル『風のサンダリーノ』についての思いを語った。 【関連】おもちゃコンサルタント「自由な遊びを見守るのが仕事」 最も大切にしているのは“教えない”こと “風の彫刻家”として知られる新宮さんは、御年87歳。東京芸術大学卒業後、イタリアに奨学生として留学し、帰国後は日本万国博覧会(大阪万博)で野外彫刻を発表。以降、ステンレスの羽が風や水によって動く作品は、常に新しい形を見せてくれるとして、日本はもとより世界中で親しまれている。 今月12日(木)からは、台湾・フーボンアート美術館で『宇宙 – 風の旅人 – 新宮晋』を開催。新作絵画を初披露するなど、精力的に活動している。 そんな新宮さんが近年力を入れているのが、子どもたちと共創するプロジェクトだ。 アート活動「元気のぼり」は、東日本大震災を受けて立ち上がったプロジェクト。鯉のぼりのような形をした筒状の白い大きな布に東北復興への願いを込めた絵やメッセージを描き、風に乗せておくるというもの。毎年春に開催され、子どもたちの元気なメッセージが大空で風を受けて雄大にたなびく姿がみられる。 自身の作品が12基展示されている、兵庫県立有馬富士公園内の「新宮晋 風のミュージアム」には、今年から『木の動物園』が登場。三田市在住の彫刻家・三宅之功氏が協力し、子どもたちが描いた架空の動物を立体彫刻に仕上げ、訪れる人を楽しませている。 立体造形以外に、絵本制作も手がける新宮さん。10万光年の彼方からやってきた主人公・サンダリーノが活躍する絵本『サンダリーノ、どこからきたの?』(ビーエル出版)は、代表的な作品のひとつだ。 8歳の少女・ソラとの出会いを通してさまざまな風景を旅し、ときに試練に直面しながらも、その過程で友情や愛、人々の間に失われつつある自然とのつながりの大切さを学んでいく姿をユーモラスに描いている。 「サンダリーノは、彼方の星から地球を観察するなかで、イノセントな少女・ソラちゃんが地球人とコンタクトを取るにあたって安全であると認識し、カミナリのエネルギーを利用して地球にやってきます。我々人類は、“自然”とどうコンタクトするのか。サンダリーノには、大人の世界と人間がやっていることへの批判をしてもらっています」(新宮さん) 今月27(日)には、有馬富士公園休養ゾーン「新宮晋 風のミュージアム」水上特設ステージで、ミュージカル『風のサンダリーノ』が開催される。 年2回、新宮さん自身が能や音楽祭などの企画・演出を手がける恒例のイベントで、今年は絵本『サンダリーノ、どこからきたの?』をベースにしたミュージカルを披露する。 ミュージカル『風のサンダリーノ』は、サンダリーノの歌を作曲したギタリスト・清野拓巳氏をはじめ、即興演奏を得意とする池田安友子氏、ヴォーカリスト・MIKIKO氏らミュージシャンに加え、小中公平氏率いる三田少年少女合唱団がサンダリーノの世界観を支える。 開演時間が午後4時半というのにもこだわりがある。新宮さんは、「この日の日没を調べたら午後5時15分で、そこからどのくらいで星空が見えてくるかを計算しました。サンダリーノがやってきた星が見えるかもしれませんからね」と笑顔を見せた。 平田さんが「豊岡演劇祭にもぜひ、参加いただきたいですね」と話すと、新宮さんは、「サンダリーノの物語は、まだ序章に過ぎない。小説にしないと全体像が表せない。これからも毎年続いていく物語です」と創作欲をみせた。 薄暮に浮かぶサンダリーノの幻想的な物語は、きっとサンダリーノの存在を確信する体験になるに違いない。 ※ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』2024年10月24日放送回より
ラジオ関西