「知っているのは松山英樹選手と渋野日向子選手だけです!」 ゴルフは好きでもトーナメントを見ない人が増えている?
トーナメントを見ている人でもポイントランキングを理解していない
ポイントランキングシステムに関しては、もう1つ印象深い出来事がありました。同じ店でPGAツアー(米国男子ゴルフツアー)のプレーオフシリーズを見ていたとき、こんな質問を受けたのです。 「PGAツアーのプレーオフって何試合あるんですか? どうやって年間王者を決めるのですか?」 これは鋭い質問です。PGAツアーのプレーオフの試合数と仕組みは最近変わりました。以前は4試合で構成されていて、初戦が125人、2戦目が70人、3戦目が50人、最終戦が30人で年間王者を決めていました。しかしポイントランキング1位の選手と2位の選手が最終戦でどういう状況になったら順位が入れ替わるかという条件が分かりにくいという欠点がありました。 そこでPGAツアーはプレーオフを3試合制に変更しました。初戦が70人、2戦目が50人、最終戦が30人で、最終戦はポイントランキングに準じて1位が10アンダー、2位が8アンダー、3位が7アンダーといった具合にポイントをスコアに換算する試合形式にしました。 ところが2024年シーズンはスコッティ・シェフラー選手(米国)がポイントランキングで2位以下に圧倒的な差をつけていたにもかかわらず、それをスコアに換算するとわずか2打差というのは不公平ではないかと議論になりました。 結局、シェフラー選手が首位を独走したので大きな騒動にはなりませんでしたが、逆転を許していたら、またプレーオフの仕組みを変える議論が巻き起こっていたかもしれません。 話を元に戻しますと、PGAツアーを熱心に見ている人でさえもプレーオフの仕組みが分かっていないのですから、トーナメントをまったく見ていない人には、1年間の流れや仕組みが到底理解できないでしょう。 日本の男子トーナメントに至っては、試合がいつ開催されていて、誰が勝ったのか話題になることすらありません。「松山英樹選手が日本の試合に出ることはあるのですか?」と聞かれるくらいです。 「10月に『ZOZO CHAMPIONSHIP』というPGAツアーの試合が日本で開催されるので、その試合には出ると思いますよ」と伝えると、「だったらその試合は見ようかな」という答えが返ってきます。 PGAツアーでシード権を獲得した久常涼選手、DPワールドツアー(欧州男子ツアー)で初優勝を挙げた星野陸也選手や中島啓太選手に桂川有人選手、国内ツアーで頑張っている平田憲聖選手や杉浦悠太選手や米澤蓮選手も残念ながら名前を知られていません。 彼らの頑張りが足りないとは思いませんが、ゴルフをする人でもトーナメントを見なくなっている現状を踏まえると、名前を知ってもらうにはPGAツアーで優勝し、4大メジャータイトルを手にするところまで上り詰める必要があるのかもしれません。
保井友秀