「捨てればゴミ、集めれば資源」家庭の廃油を航空燃料に…商業施設で回収、石油大手などが協定
これまで捨てられてきた油が地元の工場で精製され、関西空港から世界へ飛び立つ航空機用の燃料に生まれ変わる――。堺市は各家庭で使った天ぷら油などを回収し、次世代航空燃料「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」として再利用する仕組みを広めようと、石油元売り大手などと連携した取り組みを始めた。(北口節子) 堺市堺区のイオンモール堺鉄砲町で昨年11月、同市とプラント大手の日揮ホールディングス、コスモ石油、バイオ燃料メーカー「レボインターナショナル」が、SAFや原料となる廃食油の資源化促進などに関する協定を結んだ。
市以外の3社は、2022年に合同会社「サファイアスカイエナジー」を作り、市内に国内初となるSAFの大規模製造工場を建設している。各家庭の使用済み食用油をイオンモール堺鉄砲町内の回収ボックスに持ち込んでもらい、レボ社が回収して、製造工場に運ぶ。廃食油を使ったSAFは、25年度にも供給が始まる予定だ。 SAFは原油を精製して作る従来の燃料に比べ、二酸化炭素の排出量を約80%削減できるという。政府は30年までに、国内航空会社が使う燃料の10%(170万キロ・リットル)をSAFに置き換える目標を掲げている。
しかし、廃食油の再資源化は進んでいない。全国油脂事業協同組合連合会(全油連)によると、全国の家庭から廃食油は年間10万トンが発生する。しかし、大半は凝固剤で固めたり、新聞紙に吸わせたりして可燃ゴミとして処理され、回収率は4%程度にとどまるという。堺市でも、これまで分別回収は行っておらず、試算では、家庭から計27トンの回収が見込まれる。 協定の締結後、イオンモール堺鉄砲町では、府立堺工科高定時制の生徒が、フライパンから廃食油をペットボトルに移す工程を実演し、市民に協力を呼びかけた。店内の回収ボックスに、ペットボトルに移し替えて持参した廃食油を、早速投入する市民の姿もあった。
同市北区の主婦(73)は「捨てればゴミだけれど、集めれば資源になり、飛行機に使ってもらえるなんてうれしい。回収場所がもっと増えれば便利になる」と話した。 永藤英機市長は「堺で先進的なSAFが生み出され、それを用いた航空機が日本から世界に飛び立つことを期待している。持続可能な社会を皆さんと一緒に作りあげたい」と述べた。 今月中には、イオンモール堺北花田(堺市北区)など、他の府内イオンモール4か所でも回収を始める予定だ。