青木真也はなぜ減量に反対なのか 解決されていない死亡事故「システムが殺した」【青木が斬る】
「減量はなくならないし、ドーピングもなくならない」
「亡くなっていますよね」――。格闘技界の「当たり前」に警鐘を鳴らす理由、それは逆張りやカウンターではない。解決されていない問題が実際にあるからだ。 「減量のデメリットはメンタルの部分が一番でかいと思う。自分が減量したときにそうだったけど、抑うつ状態になっていきます。だって食えないんだもん。食べる、寝る、動くが生きていく上の基本だから。そのベースが弱くなるのは本当に気を付けたほうがいい」 減量中の死亡事故や関連した自死が実際に起きている。「俺は正直……システムが殺したと思っています」と静かだが力強く指摘した。 「問題なのは人が死んじゃうってことだよね。計量失敗した人に『ふざけるな』って叩いてた時期もあるんだけど、死んでしまったら終わりじゃん。だから、よくある計量失敗の反則金はマジで意味ないです。犯罪をペナルティーで取り締まろうってマインド自体が分かってないです。厳罰化したってなくならない。やる人はやるんです。厳罰化することで巧妙になっていくし、その分事故も起きる。『水抜きしたら罰金になるから無理にでも落とさないといけない』『罰金になるからもうここにいられない』って追い込まれていく。団体運営者はそこに対する教養がない」 さらに「殺人罪には問えないと思います。業務上過失致死にも問えない。刑事罰にはならないと思うんです。ただシステムが殺したものではありますよね。だから俺はそこに加担したくないし、関わりたくねぇと思っちゃいますよね」と続けた。 真っ当な知識なく減量をサポートするトレーナーもいるのが現実だ。「事故が起きた時に『俺だったら』って知識自慢をするじゃん。卑しい商売してるなって思います。本当に力のある人は発信しないから。魔裟斗のトレーナーだった土居(進)さんはそういう発信しないじゃん。やってる理論は大学の教科書にあるようなことだから一番まともなのに」と首をかしげた。 現在、減量時にトレーナーを利用している格闘家は多い。「俺は本当に微差だと思います。それで勝敗を分けるようなことはないです。このバンテージの巻き方だからKOできた、とかもないです」と斬った。 「減量はなくならないし、ドーピングもなくならない。ただ、それを忌み嫌う層は増えてくる」とうなずく。「僕は、勝ち負け以上に自分のライフスタイルを充実させるために格闘技をやっているのでって人たちは今後増えていくと思います」と願うように語った。 □青木真也(あおき・しんや)1983年5月9日、静岡県生まれ。第8代修斗世界ミドル級王者、第2代DREAMライト級王者、第2代、6代ONEライト級王者。小学生時に柔道を始め、2002年には全日本ジュニア強化指定選手に。早稲田大在学中に総合格闘家に転向し03年にはDEEPでプロデビューした。その後は修斗、PRIDE、DREAMで活躍し、12年から現在までONEチャンピオンシップを主戦場にしている。これまでのMMA戦績は59戦48勝11敗。14年にはプロレスラーデビューもしている。文筆家としても活動しており『人間白帯 青木真也が嫌われる理由』(幻冬舎)、『空気を読んではいけない』(幻冬舎)など多数出版。メディアプラットフォーム「note」も好評で約5万人のフォロワーを抱えている。
島田将斗