【香港】震災乗り越え工芸品を海外へ 宮城クラフトフェア、24社が参加
宮城県の伝統工芸品として知られる仙台箪笥(たんす)の門間箪笥店(仙台市)が香港島・ホウ馬地(ハッピーバレー、ホウ=あしへんに包)に構える路面店で、宮城県産工芸品の展示販売会「宮城クラフトフェア」が12月31日まで開催されている。東日本大震災で大きな被害を受けた地域の事業者を含む24社が参加。日本国内での需要が縮小する中、震災を乗り越え、海外で新たな販路開拓を目指す。【菅原真央】 フェアは門間箪笥店と宮城県が主催。在香港日本国総領事館と香港日本人商工会議所から後援を受けている。11月26日~12月10日に香港島・銅鑼湾(コーズウェーベイ)の百貨店「崇光(そごう)」で出店するポップアップショップと合わせて、191アイテムが展示される。2日にはフェア開催を記念したレセプションを開き、約50人が来場した。 切込焼(きりごめやき)、中新田打刃物(なかにいだうちはもの)など実用的なものから、こけしや玉虫塗など美術品に近いものまで幅広い作品がそろった。 雄勝硯(おがつすずり)は石巻市雄勝地区で産出する雄勝石が使われた、600年以上の歴史を持つ伝統工芸品。震災では原材料やすずり、石工芸品が流出し、壊滅的な被害を受けた。 震災をきっかけに設立された手編みニットメーカーの気仙沼ニッティング(気仙沼市)は、毛糸の帽子やマフラーなどを出品した。港町である気仙沼は漁網の補修や漁師の防寒着を編む習慣があったことから、被災した人が誇りを持って安定的に働ける仕事をつくろうと立ち上げられたという。 在香港日本国総領事館の岡田健一総領事(大使)はあいさつで「宮城県は東日本大震災で最も被害を受けた県の一つ。作品には、震災の苦労を乗り越えて、宮城の工芸品を香港、世界に届けたいという事業者の熱い気持ちが込められている。今回のフェアが、日本の工芸品が世界で活躍する成功モデルとなればいい」と話した。 宮城県国際ビジネス推進室の鈴木清英室長によると、食品などの輸出支援はこれまでも行っていたが、工芸品のテストマーケティングを県が海外で行うのは初めて。事前に仙台で事業者向けにセミナーを開き、香港でどんな商品が求められているかなどを説明した上で、希望する事業者と商談を行って出品する作品を決めた。 「日本の工芸品が好きな人が集まる門間箪笥店でテストマーケティングを実施するのはベストな手段。期間も長く、海外の大規模展示会に出展するより客の目に触れるチャンスは大きい」と自信を示した。 ■直行便再開、観光PRにも 香港と仙台を結ぶ航空直行便が再開することから、香港からの観光客増加にもつなげたい考えだ。同路線の定期便運航は13年ぶり。12月7日に大湾区航空(グレーターベイ・エアラインズ)、12月18日に香港航空(ホンコン・エアラインズ)、来年1月17日に香港快運航空(香港エクスプレス)と3社が相次ぎ就航する。 鈴木氏は「この場で宮城を知ってもらった後は、実際に訪れて工芸品や観光、食事を楽しんでもらいたい」と期待を込めた。 門間箪笥店は店内の写真パネルで宮城の観光名所なども紹介している。門間一泰社長は「まずは宮城について認知を広げることが大事。ここで宮城の工芸品を見た時の記憶が、日本を訪れる際に宮城にも行ってみようというきっかけになる。次のステップで現地での工芸品購入にもつながれば」と話した。 ■海外需要に望み 門間箪笥店は2021年12月に香港の同店をオープン。昨年は山形県産工芸品の展示販売会を開催するなど、日本の手工芸品の海外市場開拓を手助けしてきた。 手工芸品は日本国内での売り上げが年々減少しており、それに伴い事業者数も減っている。門間氏は「売れていなければ自分の子どもには継がせられないし、弟子を取れる状況にもならず、結果的に廃業せざるを得ない。一方で、海外には欲しい人がいくらでもいる」と指摘。こうしたミスマッチを解消するために香港の市場を活用したいとしている。