「マイナ保険証のみの受付になります」薬局で誤った対応 SNSで炎上 大きな問題に マイナ保険証の利用「ゴリ押し」キャンペ ーンの波紋(前編)
■病院では従来の保険証 薬局ではマイナ保険証
5月のマイナ保険証の利用件数は1424.7万件で、4月から約214.4万件増加しました。この増加分の、実に約67パーセントが薬局での利用です。(142.7万件が薬局、次いで医療診療所が46.6万件、病院16.6万件、歯科診療所が8.5万件) 薬局で保険利用の薬をもらうには処方箋が必要ですから、必ず病院や診療所を受診してから薬局に行きます。病院の受診だけの人はいますが、薬局だけの人はいません。 しかし、5月の利用件数を見ると、薬局の増加数142.7万件は、病院や診療所全体の増加数71.7万件の約2倍です。これは、言い換えれば、病院では従来の保険証を利用し、薬局でのみマイナ保険証を利用した人が、70万人以上いたということです。 歯科診療所や院内処方の病院などに行き、薬局を訪れないケースも多いので、実際には、もっと多くの人が、薬局でのみマイナ保険証を利用したと思われます。なぜ、このようなことになってしまったのでしょうか。
■厚労省が作った「マイナ保険証 促進のための台本」
厚労省はことし3月、キャンペーンに先駆けて医療機関向けに「マイナ保険証促進トークスクリプト」を作成、公開しました。患者さんに対して、どのように声をかければ良いかを、フローチャート形式で示した、言うならば「台本」です。「薬局向け」と「病院向け」の2種類があり、両方とも厚労省のHPで見ることが出来ます。 その中身はというと… 最初のお声がけ「マイナンバーカードはお持ちでしょうか?」で、「はい」か「いいえ」の回答によって、次のセリフに進みます。 「いいえ」に進み、さらに「まだマイナ保険証を作成していない場合」は、 『2024年12月2日に現行の健康保険証の発行が終了します。まずはぜひ、お早目にマイナンバーカードの作成をお願いいたします』 というセリフに続くのです。 繰り返しになりますが、マイナンバーカードの作成は任意です。ですが、この台本では「作成をお願い」しています。 この厚労省の「台本」に沿って、薬局で患者さんたちに声かけが行われ、その声かけによって「12月以降はマイナ保険証がないと薬がもらえない」と誤認する人が増えています。結果として患者さんに誤った案内を行ってしまっているのです。