大統領職を代行する韓悳洙首相「憲法裁判官任命、与野党合意まで保留」 12月26日談話全文
韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行・首相が26日、「与野党が合意して案を提出するまで憲法裁判官の任命を保留する」と表明した。 【写真】国民向け談話を発表する韓悳洙権限代行 韓権限代行は同日午後、政府ソウル庁舎で対国民談話を発表し、「大統領権限代行は憲法機関任命を含む大統領の重大な固有権限行使は自制せよというのが憲法に込められた精神」と自身の見解を述べた。 韓権限代行は「大韓民国の歴史に与野党合意なしに任命された憲法裁判官は一人もいなかった」として「憲法裁判官任命に対して合理的な国民が異見なく受け入れられる賢明な解決法が必ず必要だ」と述べた。 憲法裁判官の任命を強行すべきだという野党の主張に対して、韓権限代行は「大統領権限代行が与野党の政治的合意のない政治的決断を下すことが、果たして韓国の憲政秩序に合致するのか」と述べた。
以下は韓権限代行の対国民談話の全文。 尊敬する国民の皆様、静かに一年を締めくくり、新年を準備しなければならない時期に、国のことで国民の皆様を心配させてしまい、心が重いです。 今、大韓民国はかつてない困難に直面しています。私は大統領権限代行・首相として、われわれがこの困難を乗り越えていく間、国家の安危(安全と危険)と国民の日常にわずかの揺れもないように安定した国政運営に全力を尽くすことを私の最後の役目だと考えています。そのためにひたすら国民だけを見つめ、憲法と法律によって国全体の未来のためにすべての事案を判断する方針です。 尊敬する国民の皆様、私は本日、国民の皆様が深い関心をお持ちの憲法裁判官の任命問題について、私が持っている悩みを率直に申し上げるためにこの場に立ちました。 これまでわが国が歩んできた道を振り返ってみると、これより大きな困難が迫っても私たちは常に乗り越え、また乗り越えてきました。それを可能にした力の一つがまさに政治の力でした。 理念対立で多くの悲劇を経験した韓国ですが、それでもいつも私たちのそばには陣営の有利不利を越え、国全体を考える政治家たちがいました。政治で解決しなければならないことを政治で解決してくださる大人たちがいらっしゃったので、私たちがここまで来られたのだと思います。今日、私たちが多くの葛藤を経験していますが、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長、権寧世(クォン・ヨンセ)国民の力非常対策委員長指名者、李在明(イ・ジェミョン)共に民主党代表を含む与野党政治家たちが必ずそのようなリーダーシップを見せて下さるでしょうし、また見せなければならないと私は固く信じています。 不幸なことですが、韓国はすでに3度目の大統領権限代行体制を経験しています。大統領権限代行は、国が危機を乗り越えられるよう安定的な国政運営に専念するものの、憲法機関の任命を含む大統領の重大な固有権限の行使は自制せよというのが、韓国の憲法と法律に盛り込まれた一貫した精神です。 もしやむを得ずこのような権限を行使しなければならないのであれば、国民の代表である国会で与野党合意が先になされることが、今まで韓国憲政史で一度も崩れたことのない慣例だと思います。 黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行・首相も、憲法裁の弾劾審判の判断に影響を与える任命はしないという原則に基づいて、憲法裁の判断前には憲法裁判官の任命をせず、憲法裁の判断が出た後に任命しました。 このように、大統領権限代行が大統領の重大な固有権限を行使する前に与野党が合意する過程が必ず必要な理由は、法理解釈が交錯して分裂と葛藤が激しいにもかかわらず時間をかけて司法判断を待つ余裕がない時、国民の代表である与野党の合意こそ民主的正当性を確保し、国民の統合を引き出すことができる最後の堤防だからです。 尊敬する国民の皆様、私は今回のこと(非常戒厳事態)によって韓国国民が感じている不安と怒りを切実に実感しています。 事態の早急な収拾と安定した国政運営のために、早急に解決されなければならない重大な事案の一つが憲法裁判官の充員だということに異見を持つ方はほとんどいらっしゃらないと思います。 「国民が怒っているから任命すればいいじゃないか。何が問題なのか」とおっしゃる方々もいらっしゃいますが、この問題は残念ながらそんなに簡単に答えを決められないというのが私の悩みです。 憲法裁判官は憲法に明示された憲法機関として、その役割と責任が重大です。韓国の歴史を振り返ってみると、与野党の合意なしに任命された憲法裁判官は一人もいなかったという点が、その座の重さを裏付けています。 とりわけ今は国家の運命と歴史を決める公正な裁判が憲法裁判官にかかっている時点です。憲法裁判所の構成と憲法裁判官の任命について、合理的な国民が異見なく受け入れられる賢明な解決策が必ず必要です。 憲法裁判官の補充について、与野党はわずか1カ月前まで現在とは異なる立場をとり、そしてこの瞬間も真っ向から対立しています。 こうした状況で、野党は与野党の合意なしに憲法機関の任命という大統領固有の権限を行使するよう大統領権限代行に働きかけています。 このような状況が続くと、ややもすすれば避けられない非常事態が起きない限り、大統領権限代行は大統領の固有権限行使を自制し、安定した国政運営だけに専念しろという韓国憲政秩序のもう一つの基本原則さえ損なわれる恐れがあります。 尊敬する国民の皆さん、大統領権限代行・首相として、私はひたすら国民だけを見つめ、憲法と法律によって国の未来のために判断するだけで、個人的な去就や栄誉・恥辱は何ら重要ではないと心から思っています。 与野党にもう一度懇切に申し上げます。 アメリカは建国以来200年余りの間、弾劾訴追の危機に追い込まれた大統領は5人で、韓国は70年余りの間、すでに3度目の大統領権限代行体制を経験しています。 私はこれまで、憲法裁判官の任命問題について、与野党の政治家はもちろん、左派・右派のジャーナリスト、憲法学者、政治学者の皆様のお話を幅広くお聞きし、深く熟考してきました。 私が何より重く感じる疑問は、大統領権限代行が与野党の政治的合意のない政治的決断を下すことが果たして韓国の憲政秩序に合致するのかということです。 私はこのような悩みにきちんと答えを探さずに結論を出せというお言葉に同意できません。また、きちんと答えを見つけることが必ずしも長い時間を要することだとも思いません。 韓国がどのようにここまで来たのかを振り返ってみると、私たちの後方には私たちより大変な状況で、私たちより難しい決断を下して犠牲を払ってきた先輩世代がいました。政治分野が特にそうです。 若手の経済官僚時代、私は中東とドイツで汗を流す韓国国民、劣悪な国内で輸出神話を作った韓国企業、民主化に努力する市民と知識人、そして彼ら皆のために与野党双方でひたすら国のために、時に自分を貫き時に妥協する政界の巨人たちを眺めながら、大韓民国の力を感じ、私自身も身を投じて働く覚悟を固めました。 尊敬する禹元植国会議長、権寧世・国民の力非常対策委員長指名者、共に民主党・李在明代表を含む与野党の政治家たちが、今皆さんを見ている次世代の韓国人たちのために、先代の政治家たちを越える知恵と勇気を見せてくれることを、大統領権限代行・首相として丁重にお願い申し上げます。 与野党が合意して案を提出されるまで、私は憲法裁判官の任命を保留します。与野党が合意して案を提出すれば、直ちに憲法裁判官を任命します。 ありがとうございます。 キム・ギョンピル記者