「勉強家」「体幹が強い」――ゆかりの作家が語る、舟越桂の姿。彫刻の森美術館のトークショーレポ
ちぎった紙に、必ず鉛筆でメモをする姿――保井が見た舟越の印象
三木と同様、舟越と東京造形大学でともに教鞭をとった保井智貴。舟越について印象的だったのは「結構ボロの紙(※)に、必ず鉛筆でメモをする」ことだったという。「何気ない僕の、学生の、他の先生の言葉を『あ、いい言葉だね』『そういう言い方するんだ』ってメモするんですよね。すごい勉強家で大先生だけれど、学生と対等に、一緒になって彫刻の勉強をしていくような印象があります」と語った。 今回展示しているのは、『untitled』と『tictac』の2点。「彫刻をやっていく原点になる作品」と説明し、「ちょうどその当時、舟越先生の作品を見ていたころだったので、もっと新しい作品を出そうかとも思ったのですが、あえて古い作品を出品したいと思いました」。 「10年前は人物像に色を使う人って他にあまりいなかったし、知らなかったんです。舟越先生の作品集を見ながら、どういうふうに彫刻をして、どういうふうに色をつけているのか、それを見ながら制作してたなと思い出しました」。 ※三沢によると、紙をあえて手でちぎって持っていたそう。その感じが好きだったということだった。
「桂さん、みんなでオカピつくるよ」「そうか! それはいいな」
本展には、『三沢厚彦 アニマルハウス 謎の館』にて、三沢がゲスト作家に舟越、杉戸、小林正人、浅田政志を招き、会期中に共同で制作した作品『オカピのいる場所』も展示されている。 トークショーでは三沢と杉戸が、その制作当時を振り返る場面も。三沢は、「(作品は)展覧会初日になんとなくはつくるけど、そっからはもう自由にやってこうよってね。どうやって桂さんを参加させようかと話をしていたら、杉戸さんが『オカピ!』って。桂さんオカピ好きだから(笑)それで僕らがオカピのベースを持って行って、『桂さん、みんなでオカピつくるよ』って声を掛けたら、『そうか! それはいいな』って言ってくださった」と楽しげに振り返った。 続けて、「桂さんは(制作の)出席率が良かったんです。当時、僕は朝からいろいろ調整したりしていたので『今日はもう休みたいな』と思っていると、夕方ごろに電話がある。『三沢くん、いま何してんの』『あ、家にいます』『俺、いまから松濤美術館行こうかと思ったけど、それならいいかもなあ』『あ、いや、行きますか』ってなるんですよ(笑)だいたい18時の閉館後に行って、朝3時まで、朝刊が届くような時間までやってくれた。一番熱心にやってくれて。オカピは、相当楽しかったんだと思います」と話していた。 このオカピの腹部のあたりをよく見ると、舟越によるスケッチが描かれているのだという。
テキスト・撮影 by 今川彩香