「勉強家」「体幹が強い」――ゆかりの作家が語る、舟越桂の姿。彫刻の森美術館のトークショーレポ
ラグビーをすれば絵が上手くなる? 舟越の体幹の強さを語る三沢と杉戸
三沢厚彦と杉戸洋は、渋谷区立松濤美術館で2017年に開かれた展覧会『三沢厚彦 アニマルハウス 謎の館』で舟越と共作。また舟越、三沢、杉戸の3人は、ラグビー経験者という共通点もあるのだという。 「(舟越)桂さんは体幹が強くて、重心も低い。これは彫刻の精度に関係していると思うんです」と語る三沢。美術とラグビーの関係についても語ったうえで、舟越の作品についても言及した。 「ラグビーって、自分がライバルになるんです。身体づくりなどで自らが成長しないと、試合を楽しめないから。ラグビーをやるということは、つねに自分を知るということ。美術もそういう要素が多いと思うんです。僕は彫刻など物質を扱うと肉体的にしんどいこともあるんですが、ラグビーの練習よりは全然しんどくないんですよね」(三沢) 「桂さんの作品は半身の像が多いですよね。人と会話するときに認識するのって、顔からこの辺り(腹のあたりを指す)らしいんです。桂さんはのちのちそれを他人から聞いて『あっ、なるほどと思った』そう。桂さんは感覚的に、そういうことを察知するんですよね。タックルするときも相手を注意深く見る必要がありますが、桂さんはつねに相手のことを意識して見ていた」(三沢) 大学でラグビー部に入部したという杉戸洋は、まさに「ラグビー部に入れば制作も上手くなると言われて入った」と話した。「なんでかなと思ったんだけど、下半身ができる。絵を描くのも自分のへそを知ってないとダメで、へそだけ大事にすれば絵を描ける。これ本当だと思うんですよ。へその中心、高さを把握することは、空間の把握につながってくる」とした。 柔道経験者でもある杉戸は「舟越さんには、柔道で倒せないなという最初の印象があった。隙がないんですよね。腰の引き方がちょっと違う」と話していた。 三沢は、本展に展示している『Animals 2023-01』について「去年、千葉市でやった展覧会の新作なんですよ。作品集を出したとき、桂さんと対談をしたんです。美術館で対談する予定だったんですけど、ちょっと体調が悪くて桂さんのアトリエでやったんです。作品は後日見てもらえればいいかなと思ったんですが、お見せすることはできなかった。この展覧会は生前からプランニングされていたので、桂さんに見てもらえるし、同じ場所で展示されるのに一番ふさわしいという気持ちで選びました」と語った。 杉戸は本展に、今年に国立西洋美術館で展示した『easel』を選出した理由について、「あんまり立体はつくらないんですけど……。これ(作中の粒)はピーナッツなんですけど、皮むいて、一個一個現物を型取りしたもので。一つのパネルに何粒のピーナッツを入れれば綺麗になるのかと、一つ間違えれば数え直さなければいけないんですよね。舟越さんも、なんか……いつも手元でちょこちょこやってたから、例えばこのピーナッツのことだけでも、話すことがいっぱいあったな、と思って」と語った。