阪神マートンが目下打撃3冠を独走している理由
意識革命と飛ぶボールの恩恵
阪神が日本一となった1985年に「神様、仏様、バース様」というスポーツ新聞の見出しが流行したことがあった。まさに「神様、仏様、マートン様」。そのバットが止まらない。甲子園での巨人3連戦の初戦に決勝3ランを杉内から打ったマートンが12日の第2戦でまた打った。2点リードの6回無死一、二塁。内海に逃げ場のない場面で、甘いストレートを見逃さずレフトへ3ラン。7回にも駄目押しのタイムリーで満員の虎党を沸かせた。 「能見さんがいいピッチングをしていたし、少しでも助けたいという気持ちだった。チャンスだったし、打てるボールは積極的にいこうと考えていた」 能見も完封勝利。チームもマートンのバットに乗せられるように4連勝だ。マートンは、ここまで14試合で51打数25安打で、打率・490。ホームランも単独トップの6号となり、目下、打点の「29」と合わせて3冠王である。なぜ来日5年目の助っ人は、神がかり的に打っているのか。それには、いくつかの理由が考えられる。 一つ目は調整の成功説。マートンは年に何度か、こういう好調時期を作るが、今年はオープン戦の終盤に一度、大きく調子を落とした。マートンなりに試行錯誤しながら調子を再び上げたが、その調子の波が、開幕直後にピタリと当たったというもの。 二つ目は、意識変革と飛ぶボールの恩恵だ。本来、コンパクトなスイングが持ち味だったが、昨年の後半は4番に入ったことで長打を求められた。マートンも、そのためにスイングをあれこれと工夫し始めたが、結局は、コンパクトなスイングでOKだという結論に至った。 「日本のスタジアムは狭い。それを考えると振り回す必要はないんだ」 しかも、この4月からは、公式球が飛ぶボールの違反球に替わっていたことの恩恵を得た。東京ドームで、マシソンから打った打球は、上段までライナーで届いたし、11日の巨人戦で、ライトへのライナー性の打球が伸びてオーバーフェンスとなった3ランも明らかに、これまでと飛距離が違った。