【独自】熊本県、公益通報者を懲戒 処分に不服申し立て 旅行割引事業問題
熊本県の旅行割引事業を巡る県上層部の対応を問題視した公益通報を受け、第三者調査委員会が4月に調査報告書を公表した翌日、県が公益通報者をパワハラを理由に懲戒処分にしていたことが11日、分かった。代理人の樋口雄三弁護士と板井俊介弁護士が、通報者は県職員だと明らかにした上で、熊本日日新聞の取材に答えた。公益通報者保護法が禁じる「不利益な取り扱い」に当たると訴え、県人事委員会に不服を申し立てている。代理人らが近く記者会見する。 熊本県旅行助成事業 不適切運用問題
代理人によると、通報者は4月12日、複数の部下へのパワハラがあったとして減給3カ月の懲戒処分を受けた。処分を発表した際の県人事課の説明によると、人前で部下を叱責[しっせき]するなどし、うち1人は精神疾患を発症したとしている。 通報者側はパワハラを否定し、精神疾患については「医師の診断書がなく、客観的根拠のない違法な処分だ」と反論。通報者の上司が県の聴取に当初は「パワハラには当たらない」と答えていたが、昨年9月の報道各社への公益通報後に「パワハラはあった」と意見を変えていたなどとして、「公益通報への報復措置だ」と主張している。 通報者は、旅行割引事業「くまもと再発見の旅」に関する助成金の不適切受給の疑いを調査していた。公益通報によると、昨年2月に特定の旅行業者を追加調査しようとした際、当時の県上層部から別の上司を通じて「もうよかろ」「ミリミリ(ミリ単位で)詰めるな」などと見逃しを指示されたと訴えている。通報者は拒否し、調査担当を外されたという。
課長級職員である通報者は今年4月の定期異動で、課長補佐級が就くことが慣例の役職に異動になったとして「業務はほとんど割り当てられず、事実上の降格だ」と訴えている。熊日の取材に「公金の使途に疑問を呈したら逆に処分された。耐えられない」と話した。 公益通報を受けて県が設けた第三者委は4月、助成金の不適切な受給はなく、県上層部による「見逃し」指示もなかったとする報告書を公表した。通報者側はこの内容について「重大な事実誤認がある」として今後、具体的に反論するとしている。(植木泰士) ◆公益通報者保護法が禁じる「不利益な取り扱い」 同法第5条は、労働者らが「公益通報をしたことを理由」に、使用する事業者は「不利益な取り扱いをしてはならない」と規定。消費者庁参事官室の逐条解説によると、降格、減給、退職金の不支給、不利益な配転、懲戒処分など、従業員の地位や人事に関わる事項のほか、仕事を回さない、雑作業をさせるといった事実上の行為も含まれる。