「アメリカ人講師」襲撃事件で火が付いた「世界の中国批判」…!「排外主義」を招いた習近平の「EV大誤算」の一部始終
新興国で高まる「中国デフレ輸出」への怒り
中国の新興国向けシフトは乗用車に限ったことではない。中国の1~5月の新興国向けの輸出は前年比6.7%増の4544億ドル(約70兆円)と好調だ。だが、今後もこの傾向が続くかどうかはわからない。 ローテク分野の輸出が急増しており、新興国との間でも貿易戦争が勃発する恐れが生じているからだ(6月5日付ブルームバーグ)。 マレーシア政府は、「中国は住宅関連分野の過剰生産能力をデフレ輸出という形で貿易相手国に押しつけている」と批判している。 中南米諸国でも同様の事態となっている。中国からの鉄鋼輸出の急増で地元鉄鋼企業が打撃を受け、安価な繊維製品が地元アパレル企業を倒産に追い込んでおり、中国に対する怒りは日に日に高まっている。 中東湾岸諸国でも、「中国製品の輸出ラッシュで自国産業が大打撃を被ってしまう」との危機感が生まれている(5月14日付ロイター)。 多くの新興国が中国製品に対して厳しい貿易制限措置を講ずるのは時間の問題だろうが、これに対して中国側が逆ギレし、中国国内で排外主義が猛威を振るう事態になってしまうのではないかと筆者は懸念している。
経済困窮が引きおこす「自殺」と「犯罪」
不動産バブルの崩壊のせいで中国の世相は暗くなるばかりだ。 中国はかつて「楽観的で自信に満ちた中流階級が社会を支えている」と言われていたが、「今は昔」だ。保有する不動産価格が暴落したことが災いして貧困層に逆戻りするケースが後を絶たない。 中国各地で飛び降り自殺が多発しているため、橋や商業施設などでは監視員が常駐し、「防護ネット」が取り付けられるのは当たり前になりつつある。「中国社会は急性アノミー(社会的規範が失われて無秩序になる状態)に陥りつつある」と指摘する専門家もいる。 無差別殺傷事件も相次いでいる中、憂慮されていた事態が起きてしまった。それが、吉林省での米国人大学講師4人の襲撃事件だ。
日本人も例外ではない…
逮捕された崔という男は50代の失業者だった。犯行の動機はわかっていないが、外国人をターゲットにした無差別殺傷事件だった可能性は排除できないと思う。 中国のネットからは「清朝末期に列強に反発した庶民が組織した『義和団』が復活した」との声が聞こえてくる。「中国に圧力を強める米国が当時の列強だ」というわけだ。 残念ながら、日本も例外ではないようだ。中国メデイアによれば、雲南省で8日、日の丸に「必勝」と書かれた鉢巻きをした人物が周囲の人々から暴行を受けるという事案が起きている。 6月13日付ヴォイス・オブ・アメリカ(VOA)は、「吉林省の事件と6月1日に中国人インフルエンサーが靖国神社で路上放尿した事件には関連性がある」とする識者のコメントを伝えている。 この事件は、正確には靖国神社の石柱に放尿する仕草をしたあと、赤いスプレーで「Toilet」と落書きして逃げ去った動画に批判が集まったものだ。中国でもこのインフルエンサーへの批判が起きているが、中国国内の状況が次第に悪化するなか、日本人への排斥運動についても、厳しいチェックが必要だろう。 日本にとって最悪のチャイナリスクが起きないことを祈るばかりだ。 連載記事「「EV」がアメリカだけでなく中国でも絶不調に…トヨタ「ハイブリッド一人勝ち」のウラで「中国EV大ピンチ」の深刻すぎる実態」では、中国経済の深刻な状況をさらに詳しくお伝えする。
藤 和彦(経済産業研究所コンサルティングフェロー)
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