九電工の「サンシャイン60」電気工事施工は「相当な衝撃で伸びるきっかけに」…以降、東京に注力
新築ビル内に電気ケーブルや送風管(ダクト)を張り巡らせる工事を請け負う九電工(福岡市)は、首都圏で進む再開発の需要を取り込んで急成長を遂げている。12月に創立80周年を迎える今年度の売上高は過去最高の5000億円に達する見通しだ。攻めの経営で、大株主の九州電力から発注される電柱や電線の設置・維持業務への依存度は大きく低下している。今後の経営戦略などについて、石橋和幸社長(65)に聞いた。 【図表】九電工が近年施工した首都圏の主な大型工事…国立競技場や麻布台ヒルズ
――現在の事業環境は。 「全国的に建設需要が旺盛だ。首都圏の再開発はしばらく堅調に続く見通しで、関西でも大阪・関西万博の後にカジノを中心とした統合型リゾート(IR)の整備が決まっている。メンテナンスなど小型の工事もとっていくことが重要だと考えている」
――首都圏での売り上げの伸びが大きい。 「サンシャイン60の電気工事を九州の企業が施工したことは当時、相当な衝撃で、伸びるきっかけになった。それ以降、東京に注力し、ランドマークとなる建物の仕事もできるようになった。九州以外の売り上げは3割程度だが、首都圏はまだまだ伸びしろがある」
――売上高に占める九電グループからの受注割合は1割程度に低下している。 「相対的な比率は落ちても、大事な株主で密接な関係にあることは変わりない。配電線工事は当社の原点でもあり、災害復旧などで電気のインフラを守る重要な仕事だ」
――強みは何か。 「九電工単体で、電気と空調管の分野を合わせて約1000人の技術者を直接、雇用しており、これほど多い会社はほかにない。社員なので技術力とやる気は高い。同業他社にない強みだ」 「また、電気、空調管工事の両方に注力しているサブコンも他にはない。両方同時に施工できるメリットがあり、今後、他社が弱い空調管の比率はさらに増えるだろう」
――人手不足の対応は。 「今年から残業時間の上限規制が強化されたこともあり、無駄を省き、時間外労働を減らす取り組みを進めている。ゼネコンにも理解してもらい、基本的に土日は現場を閉鎖するということは浸透している」 「若者から選ばれる魅力的な会社にするためには、もっと処遇を改善しなければならない。東証プライム市場に上場するほかの企業と比べて恥ずかしくないようにしたい」
――今後注力する分野は。 「安定的な収益を得られる都市開発事業への参画や自社物件の開発などを強化していく」