不動産、今は買い時か-利上げや株価急落でも都心「3A」は取引活発
葛飾区はマイナス
また富裕層向けではない価格帯への投資には注意が必要になりそうだ。不動産の仲介や相続のコンサルティングを提供するあゆみリアルティサービス(東京・中央)の田中歩代表によると、売買が活発なのは2億円を超えるか5000万円を下回る物件で、その間の価格帯は動きが鈍い。
価格の伸び率も高級物件に比べてなだらかだという。この価格帯は居住用の購入を検討する「実需」層も含め、手が届きにくい物件が増えているためだ。23区内でも地域によっても優勝劣敗がつき始めている。
不動産情報サービスを提供するワンノブアカインド(東京・港)のマンションレビューによると、東京23区内の8月の中古マンション価格(70平方メートル換算)は港区や中央区などで前年同月から3割程度上昇した。一方で、大田区や板橋区、葛飾区は微減となった。3区とも3年前と比べれば1割近く上昇しているが、直近では勢いが見られない。
株価影響は様子見
日経平均株価は8月5日に前週末比4451円28銭(12.4%)安の3万1458円42銭で取引を終え、1987年のブラックマンデーの下げ幅を超えた。その後は持ち直し、直近では3万8000円前後で推移している。中古マンション価格は株価に連動するとされるが、この間、不動産価格には激しい動きは見られなかった。
田中氏によると、不動産価格は日々の値動きよりも3カ月や6カ月といった中長期の移動平均に強く相関する。ただ、その傾向も近年は弱まり、強く反応するのは都心のエリアと高価格帯の物件がメインとなっている。投資目線を持つ富裕層が、一定期間のトレンドを見て購入の判断に役立てているためとみられる。井出氏も「不動産の売り買いはすぐにできるものではない上に、一過性の変動なのかどうかを見極めようとする意識が働きやすい」と話す。
とはいえ、どんな物件でも必ず大きな利益が出る時代は終わったようだ。
国土交通省の不動産価格指数(2010年=100)によると、最新の今年5月時点で都内のマンション価格(主に中古が対象)は10年から倍になり、戸建ても1.34倍となった。上昇が始まったのは13年頃からで、12年12月に発足した第2次安倍政権による金融緩和がきっかけだった。