セールスフォースは過剰な投資を避け、他社のAIモデルを活用…ベニオフCEOが語る(海外)
セールスフォースは競合他社ほどAIに投資しておらず、CEOのマーク・ベニオフもそれを好んでいる。 ライバルの一部は「過剰な」AI投資で「底辺への競争」をしているとマーク・ベニオフは話している。 「私は彼らの出費を利用して、自社製品をより良いものにするつもりだ」と彼は自らの計画を語った。 セールスフォース(Salesforce)CEOのマーク・ベニオフ(Marc Benioff)は、自らの会社は他のテクノロジー企業ほどAIに関して多額の資金を投入していないことを明らかにし、遅れをとることについて心配していないと語った。 代わりにベニオフは、同社は競合他社とのAI投資の大きな差を活用し、「底辺への競争」を避けると話している。 「彼ら(競合他社)は支出を続け、それは彼らにとって高コストになり、利益率を圧迫するだろう」と、同氏は2024年12月9日に配信されたポッドキャスト(Podcast)「オン・ウィズ・カラ・スウィッシャー(On with Kara Swisher)」で話している。 「私は彼らの支出を活用して我々の製品をより優れたものにし、低コストで、顧客にとって扱いやすいものにしていく」 セールスフォースは、AIを活用して業務を自動化するツール一式を提供する新たなスイート、エージェントフォース(Agentforce)や、アマゾン ウェブ サービス(AWS)などのパートナーによるLLM(大規模言語モデル)をホストするAIクラウド(AI Cloud)などの企業向けに複数のAI製品を提供している。また、同社は、CRM(顧客関係管理)用に生成AIを活用したアシスタントであるアインシュタイン・コパイロット(Einstein Copilot)も提供している。 セールスフォースのCEOは「我々がプラットフォームを設計した方法」によりAIへの支出を抑えることが可能となり、自社のAIモデルは「非常に効率的だ」と語った。 「例えば、トレーニングの方法やソフトウェアの開発方法など、我々は少し異なった方法で物事を進めている」と彼は話した。 「具体的にはアマゾン(Amazon)やグーグル(Google)などの他社のデータセンターを利用し、自社製のハードウェアに過度に依存しないようにしている。一部は自社で所有しているものもあるが、それを主軸とする考え方はない」 ベニオフは、セールスフォースの競合他社の中にはAIへの支出が「過剰」であり、「これらの企業のいくつかは、底辺への競争になっている」と述べた。 「多くの企業ではこうしたパブリッククラウドに進出している大きな動きがあるが、我々はどれだけ投資するかについて慎重でなければならない」と彼は付け加えた。 セールスフォースが自社のAIにどれほど投資しているかは正確には明らかではない。しかし同社の2024年第3四半期の研究開発費は13億5000万ドル(約2049億円)で、前年同期比で約12.6%の増加となっている。 ベニオフは、セールスフォースの競合他社の支出がエネルギー使用に顕著に現れていると話しており、そのエネルギー使用も管理すべきだと指摘した。また、いくつかの企業が原子力エネルギーや原子力発電所への投資を行っていることも強調した。 「これは本当に異例の展開だ」と彼は語っている。 テクノロジー業界の大手企業のいくつかは、データセンターに電力を供給するために原子力エネルギーを調達する大規模な契約を発表している。 2024年12月3日、メタ(Meta)は自社のAIへの取り組みと持続可能性の取り組みを支援するため、原子力エネルギー開発業者からの提案を受け付けると発表した。マイクロソフト(Microsoft)は2024年9月、アメリカのエネルギー企業コンステレーション(Constellation)と20年間の電力購入契約を結び、1979年に原子力事故が発生したスリーマイルアイランド(Three Mile Island)の一部を再稼働させることになった。またグーグルは、2024年10月、カイロス・パワー(Kairos Power)が開発を行っている小型モジュール型原子炉から原子力エネルギーを購入する契約を発表している。 ウォール街は、AIに投資された数十億ドル(数千億円)がいつ成果を上げ始めるのか、CEOたちからの発言を待ち望んでいるが、その支出は依然として減少していない。 メタは最新の決算報告で、「2025年はインフラ費用の成長が大幅に加速することを予想しており、大幅な設備投資の増加が見込まれる」と述べ、これは主にAIへの投資が影響していると説明している。 2024年10月に行われたマイクロソフトの同年第3四半期の決算でも、同社が提供しているクラウドサービスやAIサービスの需要が増えることで設備投資も増えることを予想しているとCFO(最高財務責任者)のエイミー・フッド(Amy Hood)は話している。 パープレキシティAI(Perplexity AI)のアラヴィンド・スリニヴァス(Aravind Srinivas)CEOは、スタンフォード大学(Stanford University)での最近の講演で、ベニオフと同様の意見を述べている。彼は、独自のAIモデルを構築することは非常にコストがかかるため、自身のスタートアップは他の企業のモデルを活用する方が望ましいと考えていると話している。 「我々はモデルがますます商品化されていくと確信していた。もしそのモデルの提供者の一つになりたいのならば、膨大な資金を持ち、毎年何十億ドル(何千億円)もの損失を出し続けても平気な企業でなければならない」 「我々はその立場になかったし、なりたくもなかった」とスリニヴァスCEOは語った。 「だから、他社のモデルを利用し、それを顧客が使いやすいように最適化することに決めたんだ」
Sarah Jackson