楽天モバイル、荒業「新定義ARPU」で黒字化へ王手 顧客定着でジレンマ脱却
「楽天モバイルの損失は改善し、黒字化への道筋が見えてきた」 楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏は11月13日、2024年7~9月期の連結決算(国際会計基準)についての説明会でこう強調した。 【関連画像】新定義のARPUで約800円を上乗せ 楽天モバイルが24年内にも単月黒字化を達成しそうだ。業績改善が続いており、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)ベースで24年7~9月期の赤字は約97億円まで縮小した。契約数が伸びた影響が大きく、13日時点では812万回線に達した。楽天G連結での営業利益も5億円となり、17四半期ぶりに営業黒字に転換した。 もっとも今回のモバイル単月黒字化に向けた業績改善は「荒業」である。これまでの定義を変え、モバイル契約者によるグループ各社の業績への貢献を新たに上乗せしているからだ。 楽天モバイルは24年内にEBITDAベースで単月黒字化を目指すとしてきた。この目標に向け契約数は好調に伸びているが、もう1つの指標であるARPU(1契約当たりの月間平均収入)が伸び悩み、黒字化に向けたハードルになっていた。そこで楽天モバイルは今回の決算からARPUの定義を変更し、新しく「モバイルエコシステム貢献額」という値をARPUに上乗せしたのだ。 モバイルエコシステム貢献額とは、楽天モバイル契約者による、楽天グループ各社の粗利益への貢献額を数値化したものだ。楽天モバイル契約者は、非契約者に比べて楽天市場や楽天トラベルなどグループ各社のサービスを利用する傾向が強い。具体的には、モバイル契約による粗利益の増加効果から、グループ全体によるモバイルへの送客効果を引いて、エコシステムへの貢献額を算出しているという。 会見で三木谷氏は「ARPUが目標の3000円に近づいてきた」と説明した。しかしこのARPUは新定義の値であり、モバイルエコシステム貢献額による増加分が800円前後上乗せされている。従来定義では、第3四半期のARPUは2039円と、前期から18円の微増となっている。 楽天モバイルはもともと、モバイル事業単月黒字化に必要な契約数の水準として800~1000万回線、ARPUの水準として2500~3000円と見積もっていた。このうち契約数は順調に伸びてきたが、従来定義ではARPUが目標値に届かないと踏んだもようだ。通信事業者の主な収益は契約数とARPUのかけ算で決まる。契約数を伸ばすだけでは、およそ230億~250億円とされる月間の営業費用を打ち消すほどの売り上げが立たないのだ。 楽天モバイルは、グループ各社の力も借りて、強引に24年内単月黒字化の目標達成に向けて動いたことになる。25年のモバイル事業の通期黒字化という次の目標も掲げている以上、なんとしてでも「単月黒字化」という成果をつくる必要性を感じたのだろう。あるアナリストは「モメンタム(勢い)を重視して楽天グループの株を買っている投資家が多く、目標に届かないとなれば株価には悪影響が出る」と分析する。