今期の操業開始未定に 豪雨被害、復旧へ懸命も 与論島製糖
鹿児島県与論町の与論島製糖与論事業所(中野貴志事業所長)は、8日から9日にかけて島を襲った記録的な雨で、敷地全体が水に漬かった。工場は地下部分が一時、水没。1階も大人のひざ程度の水位になった。水は引いたが、電気系統を中心に設備の点検作業が続いており、目前に迫った2024-25年期の操業開始日が決められない状況となっている。
中野所長によると、事務所内は8日夕の退社時、くるぶしの上程度だった水位が、9日朝の出勤時には腰の辺りまで上昇。机の上のパソコンや書類は水に漬かっていた。工場や原料サトウキビの検量所、品質取引施設も同様の状態だった。 水が引き、地下にたまった水の排出作業など進めたが、被害は甚大だった。特に電気配線が張り巡らされた工場は深刻。配電室も水に漬かっていたため、工場全体に電気を送り、機器を動かすのは困難な状況。その前段階として、複雑で広範囲な配線の通電具合の点検が必要だという。 14日現在、電気系統を中心に点検作業を継続中。水没した一部モーターは解体して、清掃している。各種データの詰まったパソコン類の復旧作業も並行して進めている。 与論島の24年産キビは収穫面積約400ヘクタールで収量約2万2千トンを見込んでいる。与論島製糖は鹿児島、沖縄両県の製糖事業者にも今期から本格適用される時間外労働の上限規制クリアなどのため年内の操業開始を予定。12日には与論町製糖対策会議(会長・田畑克夫町長)で、操業日程を決める予定だったが、工場の豪雨被害で会議開催を見送った。 製糖開始を前にした今の時期は、試運転して異常があった箇所を修理したり、部品を交換したりする。中野所長は「製糖工場の操業日程は、島では広い範囲に影響する。点検確認作業を急ぎ、何とか今月中には操業開始時期のめどをつけたい」と話した。 町産業課によると、豪雨による農業被害は13日、現在約8千万円。インゲン、サトイモなどの園芸と花卉(かき)が中心。キビは畑の一部崩壊など収穫面積の5%程度が何らかの影響を受けた。 豪雨の影響について担当職員は「製糖日程は収穫や運搬などの人員確保や作業の分担に影響する。水に漬かった(収穫機械)ハーベスターもあるようで、影響がどこまで及ぶかまだ見通せない」と話した。