「30センチ必要なのに厚さたったの3センチ」トンネルに空洞…コンクリ不足で施工不良 施工会社が謝罪 現場所長「自分はトンネル工事の専門家」和歌山・八郎山トンネル
和歌山県の串本町と那智勝浦町を結ぶ「八郎山トンネル」でコンクリートの厚さが不足するなど施工不良が見つかった問題。施工を行った建設会社が17日午前11時ごろから会見を行い、会社の社長らが一連の問題について謝罪しました。 【画像を見る】穴の向こうに空洞が見える トンネル内部と現地の様子
問題となっているのは和歌山県の串本町と那智勝浦町の町境をつなぐ県道のトンネル「八郎山トンネル」です。県などによりますと、全長711mのこのトンネルは、地震などの災害時には、海沿いの国道42号の迂回道路として、重要な意味合いを持つ県道として、整備中で、トンネルはおととし9月に完成し、去年12月に供用開始の予定でした。 しかし、おととし12月に行われた照明の設置工事で、作業員が設置しようと、アンカー用の穴をあけたところ、コンクリートを貫通して内部に空洞があることがわかったということです。空洞は少なくとも約8割の範囲に及んでいたということです。その後の調査で、本来の設計なら、コンクリートの厚さは30センチ必要なのに、最も薄いところで、わずか1/10の「3センチ」しかなかったということです。 トンネル工事は和歌山市にある「淺川組」と田辺市の「堀組」の共同事業体が実施していました。 和歌山県によりますと、業者は完成後、「覆工コンクリートの厚さは設計以上に確保されていた」という内容の書類を提出したということですが、県の聞き取りに対して、「検査で薄いことは把握していた」と回答したといい、書類を設計値以上に書き換えたことを認めたということです。
現場所長「自分はトンネル工事の専門家…本社に相談してどうなるものではない」
浅川組などによりますと、今回のトンネル工事を担当した現場所長は社内でも経験が豊富で「トンネル工事」と言えばこの人と称される“敏腕社員だった”ということです。 所長は社内でのヒアリングに対して「覆工コンクリートの厚さが確保できないことを認識しながら、本社に相談することなく工事を進め、数値を偽装して検査を通した」と回答、また、現場の従業員へのヒアリングでは、「作業所長の判断は絶対」「所長を超えて内部通報はできない」との回答が大半だったということです。 また会見で公表されたコンプライアンス委員会の提言書によりますと、ヒアリングで現場所長は「手直しをすれば工期に間に合わなくなる。赤字にしたくない。1次覆工で強度は保たれているのでトンネルの安全性に問題はないと判断した」と話したということです。また、「何よりも自分はトンネル工事の専門家であり、本社に相談してもどうなるものではない」と回答したということです。 また、所長は『覆工コンクリートは、化粧コンクリートのようなもので厚さが足りなくても問題ない』などという発言もあったということです。この内容について報告を受けた県の担当者は「全く信じられない発言で、あり得ない」と話しました。