巨人・井上温大、飛躍の陰に…今季から始めた「イメトレ」 ドラフト上位でなくても、努力と工夫次第で可能性は無限に
◇記者コラム「Free Talking」 2年連続Bクラスからセ・リーグ優勝へと躍進した巨人。今季は新戦力の台頭が目立ったが、筆頭格は8勝を挙げて先発ローテの座をつかんだ高卒5年目左腕の井上温大投手(23)だ。 昨季まで通算1勝止まりだったが、今季は150キロ近い直球に加えて、制球力にも磨きをかけて先発ローテに定着。6月以降は14試合に先発。7勝2敗と抜群の安定感を発揮した。また、19日のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第4戦でも先発を託されると、初のCS登板で堂々の投げっぷりを披露。6イニング1失点でチームの勝利に貢献した。 左のエースとして期待されるまで成長したが、群馬・前橋商からドラフト4位で入団した1年目はプロのレベルの高さに圧倒されたという。「投手の球速も相手打者も全然違う。高校野球では失投しても捉えられなかったけど、プロだと本塁打にされる」。2021年オフにはけがで育成契約にもなった。しかし、高い壁にぶつかりながら腐らず頑張り続けたことでチャンスが巡ってきた。 プロ初勝利を挙げた22年のオフ、野球日本代表「侍ジャパン」との強化試合で先発に抜てきされると、ソフトバンク・近藤やヤクルト・村上らを封じて3イニング無失点。「制球は全然ダメで、ただボールが良かっただけ」と振り返るが、日本球界を代表する強打者相手に通用したことで自信が芽生え、飛躍の足がかりを築いた。 ただ、23年は未勝利。雪辱を期した今季は新たな取り組みを始めた。登板前に相手の予想スタメンを1番から9番まで書き出し、どうやって打ち取るかを記していった。手を動かし視覚で脳に刻むことで、イメージはより鮮明になる。「投げてるときに、相手の弱点とか書いてたことが浮かんでくるようになった」。冷静さを保てるようになり、白星を積み重ねていくごとに優しい顔つきの中に投手としてのすごみがにじんできた。 井上が活躍する姿はドラフト上位でのプロ入りでなくても、努力と工夫次第で可能性は無限にあることを改めて教えてくれる。今年もドラフトで多くの選手がプロの門をたたく。今は無名の存在が、スターダムへのし上がっていく過程を見守りたい。(巨人担当・杉原雄介)
中日スポーツ