輸入国世界3位! なぜ日本人はシャンパーニュが好きなのか?
シャンパーニュは“世界で最も高貴”と称されるワイン。使用するブドウ品種や熟成期間など醸造法が法律で厳しく決められ、これをクリアしなければ「シャンパーニュ」と名乗ることはできない。
シャンパーニュにとって日本は重要な市場
シャンパーニュの権利を擁護し、さらなる発展に寄与する同業者組織が、ブドウ栽培農家とワイン生産者(メゾン)からなる「シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(通称シャンパーニュ委員会/Comité Champagne)」だ。現在は1万6200のブドウ栽培者と130の協同組合、370のシャンパーニュメゾンが加盟している。 1941年の設立以来、シャンパーニュ産業の世界的経済推移を見守り、シャンパーニュという原産地統制名称の国際的認知に貢献してきた。2015年には「シャンパーニュの丘陵 メゾンとカーヴ」がユネスコ世界遺産に認定されたことで、文化遺産の保護とツーリズムにも注力している。エペルネにある本部以外に世界11ヵ国に事務所を構え、そのうち、アジアに事務所があるのは日本と中国の2ヵ国のみ。日本は、シャンパーニュにとって重要な市場だと認識されているのだ。 日本事務局代表の笹本由香理氏はこう話す。 「日本は今、シャンパーニュの輸出国として世界第3位(1位アメリカ、2位イギリス)。特に人気が高いのがプレステージで、“高級ラインを好む国”として認識されています。秋にはワイン生産者の来日プロモーションが始まりますが、シャンパーニュの生産者は多いですね」
歴史との結びつきや逸話も大きな魅力
では、なぜこんなにも日本での人気が高いのか。これにはふたつの理由があるという。 「まず、シャンパーニュは日本料理との相性が抜群によいということ。繊細な懐石料理や鮨、天ぷら、豆腐料理など、合う料理が多いのです。日本でシャンパーニュと日本料理のマリアージュを体験して親日家になった生産者も多いですね(笑)。また、シャンパーニュはフランスの歴史と強く結びついています。 例えば、泡が立つシャンパーニュは17世紀に誕生しましたが、それ以前よりシャンパーニュ地方のワインは王侯貴族に愛され、フランク王国の初代国王クロヴィスの戴冠式から代々使われてきました。ちなみに、泡のあるシャンパーニュを初めて戴冠式で振る舞ったのはルイ15世と伝えられています。歴史上の人物の逸話も多くあり、好奇心を刺激してくれるお酒であることも理由のひとつでしょう」 とはいえ、近年は大きな懸念もある。それが世界的な気候変動だ。シャンパーニュ地方はここ40年間で平均気温が1.8℃上昇した。春霜の日数自体は減ったが、芽吹きが早まったことから、その被害は増えたという。この地はブドウ栽培の北限に位置することから、病害のリスクが高い。多くの生産者はいち早く環境保全に取り組み、サスティナブル栽培を推進しているという。また、病害に耐えうる品種としてボルティス(白ブドウ)の実験栽培も始めた。 「私たちは生産者とともにひとつひとつ課題に取り組み、さらなる発展を目指さなくてはなりません。そのためにも、私たちはシャンパーニュが唯一無二のアベラシオン(原産地呼称)であることを広くアナウンスしなくては。硬質でピュアな酸味はシャンパーニュならではの魅力。なにより、シャンパーニュは“一瞬にして気分が上がるお酒”であることを体感していただければうれしいですね」 笹本由香理 シャンパーニュ委員会 日本事務局代表。大学時代のフランス留学でシャンパーニュに開眼。商社に就職、大手メゾンのシャンパーニュやワインの輸入販売に携わる。2017年にシャンパーニュ委員会日本事務局に参画、2022年より現職。ソムリエの資格も保持。
TEXT=安齋喜美子