東日本大震災のボランティア志願者へのメッセージ(フィールドライフ2011年春号掲載)
「ボランティアお断り」と被災者から言われないために。
震災から1か月あまりたち、各種の交通機関が復旧すると、神戸にものすごい数のボランティア志願者がやってくるようになった。 このころマスコミ各社が連日ボランティアを取材し、その活躍を英雄のように賞賛したこともあり、ボランティアルームも毎日数百人もの志願者でごった返した。 後年の統計によるとこの年に被災地を訪れたボランティアは延べ138万人にも登ったという。そのため95年は「ボランティア元年」と呼ばれている。 しかしこれだけ数が増えてくると、美談ばかりでなくいろいろと困った問題が噴出した。ボランティアに来てくれた人のほとんどは善意と正義感に満ちた素晴らしい人だったが、なかには被災者から「もう帰ってくれ! 」と怒鳴られるようなひどいヤツもたくさんいた。 ボランティア同士の揉め事もけっこうあったし、激怒した被災者グループがボランティア(と名乗る連中)に石を投げつけている場面を実際に目撃したこともある。 幸か不幸か僕は個人ボランティアを束ねるような立場になってしまったので、何千人ものボランティアたち、そして“自称ボランティア”たちとディープに関わることになった。その経験をもとにここでは反面教師として「困ったボランティア・ワースト3」を揚げておく。
1位・自己完結していないヤツ
ボランティア希望者の中には「メシはどこで貰えるんですか? 」とか「僕のテントはどれですか? 」という質問を真顔でしてくるヤツが山ほどいた。そういうヤツはテントやシュラフはもちろん、食糧も飲料水も持っていない。自分は無償で働くのだから、食事と宿泊は用意されて当然だと思っているのだ。 その想像力のなさに絶句するしかない。これは通常のボランティアじゃないのだ。何万人もの人が死んでいる災害地での救援活動なのだ。まずはそれを忘れないで欲しい。 アウトドアーズマンのキミには改めて言うまでもないことだと思うが、もしこれから現地入りするなら必ずテントとシュラフと調理器具一式を携行し、滞在日数分の食糧と飲料水を自前で持っていくこと。 いまも、東北の避難所には「一日におにぎりひとつ」というような苛烈な環境下に置かれている場所がたくさんある。だから僕ら災害ボランティアは配給の弁当や炊き出し、物資として届けられたミネラルウォーターなどには絶対に手をつけてはいけない。 また、夜寝る場所にもぜひ気を配って欲しい。屋根があって乾いた場所というのは、被災者のためのスペースである。彼らはプライバシーもない狭い空間でなんとかやりくりしているのだ。僕らには帰る家があるんだし、被災地にいるのはほんの数日間だ。だから自分は屋外にテントを張って寝よう。 もちろん支援団体の中にはボランティア用のテントやプレハブ、毛布などを用意したり、給食や炊き出しをする団体もある。でも基本は「自己完結」。被災地に負担をかけるのだけはやめて欲しい。