認知症の親の介護費用に「親の財産」を使えない?資産凍結を未然に防ぐ、新たな仕組み「家族信託」とは
超高齢化社会を迎えた今、親の介護は身近なものとなっています。しかし、そんな中子どもが親の財産を代理で処分することが難しくなってきているというのです。いざというときに「親の預貯金がおろせない」「実家が売れない」そんな事態を未然に防ぐにはどうすればいいのでしょうか?テレビ・雑誌で活躍する資産凍結対策のプロ、杉谷範子さんが解説する『親が認知症になると「親の介護に親の財産が使えない」って本当ですか?』より一部を抜粋して紹介します。 【書影】〈親の介護〉いざというときに「親の預貯金がおろせない」「実家が売れない」そんな事態を未然に防ぐには?杉谷範子さん著書『親が認知症になると「親の介護に親の財産が使えない」って本当ですか?』 * * * * * * * ◆親の通帳と印鑑があれば、子が銀行でお金を引き出せる? 「子どもが親の通帳と印鑑を持っていけば、親が認知症でも銀行でお金を引き出せるのではないか?」とか、「書類と実印があれば、親の代理で不動産を売却して介護費用を工面できるのでは?」と思われた方も多いかもしれません。 たしかに、20年ほど前までは、子どもが親に代わってこうした手続きは比較的容易にできました。 しかし、現在はまったく異なる状況になっています。 今の時代は「本人の意思確認」が非常に重視されるようになっており、親の財産を代理で処分することが難しくなっているのです。 認知症を患う高齢者が増加する中、私たちは親の財産管理や相続について早めに準備をしておく必要がありますが、多くの方は「そのときになれば何とかなるだろう」と考え、放置してしまうことが少なくありません。 また、認知症が進行した親を目の前にしても、「何から手をつけてよいのかわからない」という理由で行動に移せず、事態が深刻化してしまうこともあります。
◆親の介護費用をどうやって捻出するか しかも、介護を担う子ども世代は、親の介護だけではなく、自身の生活費や子どもの教育費、住宅ローンなどにも対応しなければならないという厳しい現実があります。 親の介護費用をどうやって捻出するのか、さらには自分自身の生活をどう維持するのか、その両立に悩む人も多いでしょう。 ところで、内閣府の調査によれば、60歳以上の2人以上世帯では、平均的に約2400万円の貯蓄があるとされています。 また、そのうち約2割の世帯は4000万円以上の貯蓄を保有しており、高齢者世帯の多くは、持ち家と貯蓄の両方を持っていることがわかっています。 これらの貯蓄の主な目的として、「普段の生活維持」と「万一の備え」が挙げられており、親世代は将来、子どもたちに迷惑をかけないようにしたいという意識が強いことがうかがえます。 しかし、親がどれだけしっかりと貯蓄をしていても、認知症などで判断能力を失ってしまった場合、子どもはその貯蓄を自由に引き出して使うことができなくなります。 これは、銀行などが「本人の意思確認」を重視しているからです。こうなると、家族は大きな負担を抱えることになります。
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