「1億円以上の貯金があっても…」 高齢化する「ひきこもり」、老親が亡き後に困窮してしまう理由
「ひきこもり」の高齢化が深刻化している。老親が亡くなった後、中高年で未婚のひきこもりの子どもの生活はどうなってしまうのか。「2025年問題」を迎えるなか、頭を悩ませている老親は多そうだ。ひきこもりの家族の支援活動を行うファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんに聞いた。 【表】未婚率は年々上昇している 畠中さんがひきこもりの子どもを持つ親の相談を受けて丸32年。働けない子どもを持つ家族に対して、「親が亡くなった後の生活設計(サバイバルプラン)」の提案をしてきた。活動を始めた当初は、「ひきこもり」という言葉はなかったという。 ■格差が広がっている 「相談に来るのは、総資産1億円を超えるご家庭が多いです。これが有料相談者の平均像です。中には2億円以上という方も一定数います。一方で、区の社会福祉協議会でもひきこもりの相談業務に対応していますが、そこでは生活困窮に悩む方が多く、相談内容の多くが生活保護です。ひきこもり家庭もお金を持っている人と持っていない人の格差が広がっていると感じています」 相談者の子どものほとんどが中学や高校の時からひきこもっているという。多くの親たちが、「我が子の将来のために」と長期にわたってお金を貯め続けてきた。それが1億円を超える資産になっている家庭が多いという。最初から資産家だったわけではないのだ。自分のセーター1枚買うのもためらうほどの節約を続け、生活を切り詰めてきた人も少なくないという。
2025年は、「団塊の世代」が全員75歳以上になり、およそ5人に1人が後期高齢者になる。いわゆる「2025年問題」を迎えるなか、ひきこもりの子ども、そしてその家族の高齢化が深刻化している。10代から40年間もひきこもれば、子どもは還暦近くになる。親は80~90代。もはや「8050問題」(80代になる高齢の親が50代の子どもと同居している家庭が直面する社会問題)どころか「9060問題」になる。2022年の内閣府の調査によれば、日本全国でひきこもり状態にある人の数は146万人と推計されている。 ■ゴミ屋敷 こうしたなか、畠中さんは「お金さえあればなんとかなるという考えは甘い」と指摘する。 「血管系の疾患などで、親御さんが突然亡くなった場合、立派な家や財産があったとしても、ひきこもりの子どもが所定の手続きをすることができず、電気、ガス、水道といったライフラインが止まってしまうことがあります。親名義の銀行口座も凍結され、1億円以上の貯金があっても支援者が気づくまでそのままというケースもあります。食費さえも十分に確保できず『住居は維持しているが生活費が限界』という状態を私は『在宅ホームレス』と名づけていますが、この問題は切実です」 雨漏りがあっても屋根の修理の依頼もできず、そのままカビだらけの家に住み続ける。コンビニで買った弁当の容器や生ごみがたまってゴミ屋敷になってもそこから何もできない――。そういう状態が想像できるという。