「今でもオオタニのユニフォームを売っています」大谷翔平が消えた“エンゼルスの今”、史上最悪99敗でも…公式ショップ店員が証言「日本人ファンが来てくれる」
エンゼルスに希望はあるのか…
大谷とのコンビ“トラウタニ”で親しまれたトラウトは、左膝半月板を損傷し戦列を離れた。「ファンのみなさんと同じように、胸が張り裂けそうな思いでフラストレーションを抱えている。多くのファンを失望させたであろうことは理解しているが、よりいい選手になって復帰できるよう全力を尽くすので、信じてほしい」。8月1日、自身のXでそう発表し、シーズンを終えた。エンゼルスとの契約はトラウトが39歳を迎える2030年まで残されている。近年はケガに泣かされる日々が続くが、ファンの支持は依然として高い。 「トラウトのモチベーションは消えていない。彼はプロフェッショナルだ。常に全力を尽くすし、手を抜かないよね。ここ数年、ケガが続いているのもそのためだと思う。一方で、チームはトラウトを、(負担の大きい)センターでなくレフトや、あるいはDHにするなどして、体を休めさせてほしい。彼をシーズン全試合ずっとフィールドにいられるようにするのが現場の仕事だよ」 アメリカ人記者によるオーナーシップ批判、そして怒りも諦念も入り交じるチャック氏の言葉を聞くにつけて、こんな疑問が浮かぶ。エンゼルスに希望はあるのか。シーズン終了直後の今、どれほどポジティブな解釈を試みようともチーム向上の好材料は見えてこない。 「野球の素晴らしいところは、(シーズン前の)春季トレーニングで希望が絶え間なく湧き出ることだよ。昨年のポストシーズンだって、テキサス・レンジャーズとアリゾナ・ダイヤモンドバックスがワールドシリーズに進出するとは誰も予想していなかった。今季のパドレスだって、フアン・ソトを(ヤンキースに)放出したのにプレーオフに出場した。そんな例だってあるのだから、今は苦しくても、エンゼルスを信じることはやめないよ」
「いまもオオタニのユニフォームを売っている」
チャック氏の話を聞いた翌日、筆者はアナハイムのエンゼルスタジアムに向かった。ロサンゼルスのダウンタウンから車で50分ほど南下したカリフォルニア州オレンジ郡にある。訪れる前、あるアメリカ人記者から「街の退屈な場所にあってあまり(球場が近くにあるという)雰囲気がない」と教えられたとおり、球場の周囲にはただただ駐車場が広がっている。飲食店が多く集まるドジャースタジアム周辺とは違い、試合前後に楽しめるようなバーも少ない。アウトレットがあって閑静で住みやすそうとも言えるが、米記者の“退屈”という表現もわかる。 ア・リーグ西地区の最下位だったエンゼルスはポストシーズンに出場していない。ドジャースやヤンキースと異なり、すでにシーズンを終えている。だから当然、この日の球場には人がいなかった。エンゼルスのグッズを扱うショップは開店しているが、ゴーストタウンのようにひっそりしている。1時間近く球場周辺を歩いてみたが、誰にも会わなかった。 グッズショップに入る。女性店員がひとり。店内を回ると、チームに所属していない選手のユニフォームが飾られている。大谷である。 背番号17が去ってから1年が経つ。それなのに、なぜ……。エンゼルスの帽子を買いながら店員に尋ねる。 「今飾られているユニフォーム(5枚ほど)と、ペナントが売り切れるまでは置いておくの。それで在庫がなくなります」 ――どんな人が買っていくの? 「エンゼルスファンと、あとは日本からの観光客も。今年のシーズンも日本から観光で訪れたという人がたくさん来ていた。昨年より少し減った気はするけどね」 チャック氏が運営するファンサイトに投稿されていた、一つの記事を思い出す。「私たちが失ったもの、耐えてきたことではなく、未来について考える時だ」と冒頭に書かれたその文章には、トラウトのDH案をはじめとした数々の改善策が綴られている。 目に止まったのは、その記事のタイトルだ。もがくエンゼルスの現況を何よりも明瞭に表しているように思えた。 Surviving a Post-Ohtani World――ポスト・オオタニの世界を生き抜く。 <「エンゼルスの今」全3回/番記者編、エンゼルスファン編から続く>
(「メジャーリーグPRESS」田中仰 = 文)
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