【毎日書評】問題解決のヒント:「思考実験」でアイデア発想力と論理的思考力を鍛える
2つの球
ここに全く重さがない透明な紐があります。そして、同じ鉄の素材でつくった重い球と軽い球を透明な紐で結びつけます。そして、空気の抵抗や摩擦がない空間で同時に2つの球を落下させたら、どのような結果が考えられますか? ① 2つの鉄球が紐によって1つになるので、さらに重量は重くなり、より早く落下する ② 2つの鉄球は分かれており、軽い鉄球が重い鉄球の落下速度を減らすので、全体として落下速度は遅くなる この考え方は、果たして正しいのでしょうか?(150ページより) 答えはどちらも正しくなく、正解は「2つの球は同時に落下する」。 アリストレテスの考えた物理法則では、物体の落下速度は重量に正比例します。したがって2つの答えは合っていると考えられるわけですが、実際にはこの2つの答えは矛盾しているのです。 では、アリストレテスが指摘するように、一見すると重量の重いものが、軽いものよりも速く落下しているように見えるのはなぜなのでしょう? たとえば、鉄球と羽毛を自由落下させたら、鉄球のほうが速く落下します。 もう、おわかりでしょう。それは、空気抵抗があるからです。イタリアの数学者であるベネデッティは、空気抵抗の存在をこの思考実験から発見したのです。ベネデッティもアリストテレスの物理法則の矛盾から、物体の落下速度は物体の表面積に比例すると考えたのです。(151ページより) このように、思考実験の結果から、過去の常識では推測できなかった法則を発見することも可能だというわけです。(150ページより) 本書を読むことによって、思考実験の楽しさを実感してほしいと著者は述べています。その結果として「自分の頭で考える力」を身につけることができれば、仕事からプライベートまでのあらゆる場面でそのノウハウを活用することができるでしょう。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 総合法令出版
印南敦史