大手はもう、ガクチカ「起業」を評価しない。新卒採用担当の本音
新卒の採用面接で必ずといっていいほど聞かれる「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」。30代である筆者の就活時代は、「面接になると飲食店のバイトリーダーがやたら増える」と揶揄されたものだが、令和のガクチカで増えていると感じるのが「起業」だ。 【全画像をみる】大手はもう、ガクチカ「起業」を評価しない。新卒採用担当の本音 サークル活動などと比べると、ビジネスパーソンとしての経験に直結する華やかな経験。だが、実は採用活動において起業経験をあまり評価しないという声もある。「ガクチカ起業」に対する企業側の本音に迫ってみた。
起業経験と優秀さはイコールでなくなった
あるITメガベンチャーの人事はこう話す。 「かつては起業経験が学生の優秀度を測る大きな指標だったが今はそうではない。過去と比較し起業ハードルは下がっており、起業経験をうたっていても地力のない学生は多くなっている」 私自身も同様の実感がある。新卒採用人事として、少し前までは、「起業経験がある」と聞けば興味津々で食らいついていた。実際に強烈な自己の課題意識起点で行動を起こし、自ら資金調達も進めて泥臭く顧客開拓するなど、逆境や苦難に向き合いながら一社会人とビジネスの世界で対等に渡り合うような経験している学生もいた。 だが、最近は一言で「起業」と言っても程度の幅が広く、「起業経験」だけで評価するのは危うさを感じている。 例えば、特に新型コロナウイルス禍以降は、「オンライン塾の運営」を起業経験として語る学生を非常に多く見かけるようになった。一見華やかな経験に見えるが、実態は個人の家庭教師業の延長線上であることも多く、ステークホルダーも身内や知人に閉じているケースもよくある。 もちろん、オンライン塾の運営も「ガクチカ」として悪くはない。ただ、先述のようにビジネスのフィールドに生身で飛び出て、苦い経験もしながら社会人と渡り合っている「起業経験」と比べると、この経験は「起業」のアピール材料としては物寂しい。 こうした「起業」経験を、むしろ懸念材料と見る人もいる。 起業経験がある学生を部下に受け入れた経験を持つ、大手企業の新規事業開発室の社員は 「学生の起業経験は時に成長の足枷になると思う。経験内容次第だが、学生活動であるがゆえに自ら顧客を選びコンフォートゾーンから出ず逆風を避けるような活動をしてきた場合、社会の不条理や理不尽に折れやすい傾向はある。また、過度に自己評価が高くなっている場合、泥臭い仕事に取り組めなかったり、他者からのアドバイスを受け入れられなかったりして苦労するケースもある」 と話す。