圧勝でも最終予選へ向け本田圭佑が鳴らすハリルJへの警鐘
笑みひとつ浮かべずに、MF本田圭佑(ACミラン)は試合後の取材エリアに姿を現した。足早にメディアの前を通過していき、人数がまばらになった地点でようやく立ち止まる。 「チームが勝ったことは悪くなかったけど、課題も多い試合だった。個人的にはもっと簡単に決められたと思うし、簡単に決めさせられたとも思うので」 埼玉スタジアムで29日夜に行われたロシアw杯アジア2次予選の最終戦。すでに最終予選進出を決めていた日本代表は、勝ち点1差でグループEの2位につけるシリア代表を5対0で一蹴。8試合を戦って7勝1分け、得点27に対して失点0の成績で1位突破を決めた。 先制点は前半17分。ショートコーナーからMF香川真司(ボルシア・ドルトムント)が放った鋭いクロスは相手GKに弾かれたが、こぼれ球が至近距離にいた相手DFの顔面を直撃。そのままネットを揺らす幸運なオウンゴールという形で生まれた。 もっとも、後半21分に香川が追加点をあげるまで5度の決定機を逃している。そのなかには、左ポストを直撃した後半16分の本田のヘディングシュートも含まれていた。 一方でカウンターやイージーミスからピンチを招き、後半だけでGK西川周作(浦和レッズ)のファインセーブに3度も救われた。後半17分には相手のロングシュートが左ポストを叩いている。 だからこそ、大勝にも一喜一憂することなく本田は言葉を紡いだ。 「特に2対0になるまでの戦い方、2対0になってからの戦い方は、攻守両面において改善しなければならない場面が見られた。枚数をかければ相手にとって難しい攻撃を繰り広げられるんですけど、その分、攻守のバランスの部分でリスクを伴う。結果として何度もピンチを招いているので」 6月で30歳になる本田は「ベテランの領域に入り始めている」と自らの立ち位置を認めたうえで、自戒の念を込めながら振り返る。 「決定力と言ってしまえばそこまでですけど、要は勝負強さなんですよね。残念ながら劇的にシュートが上手くなる、あるいは劇的にシュートのバリエーションが増えることはない。ただ、当たり損ねでもいいから決める、といった部分は経験とともにまだまだ伸ばしていけるはずなので。若い選手たちはフレッシュにプレーできるけど、経験や勝負強さは欠けている。そこで僕が補うことで、結果としてチームが安定したバランスを見せることが大事だと思うので、そういった質にはこだわっていきたい」 厳しい視線は、9月から幕を開けるアジア最終予選を見つめている。