エムバペはなぜフランス代表に招集されなかったのか 事情通が明かす本当の理由
「Le Malaise(ル・マレーズ)」 いま、フランスでは誰もがキリアン・エムバペのことをそう呼んでいる。彼を取りあげた記事ではこの言葉が頻出する。「ル・マレーズ」とはフランス語で、「不調」「不快」「不安」「倦怠」など、心地の悪いネガティブな状態を指す。エムバペがそんな言葉で形容されるとは、誰も予想していなかった。 【画像】欧州サッカートップスターの美しきパートナーたち 本来ならばいまごろ、エムバペは大きな幸せに包まれているはずだった。フランス代表のキャプテンになれた幸せ、サッカー史上最高額のメガ契約を結んだ幸せ、そのメガ契約の相手が世界に名だたる、そして何より彼がずっと移籍したかったレアル・マドリードであるという幸せ......。 ところが移籍後は決して順調な滑り出しとはいかなかった。リーグ戦では第4節までゴールできず、左太ももを負傷し、マドリードに鳴り物入りでやって来た時の笑顔は失われた。やはり彼は「ル・マレーズ」なのか。ひとつ確かなのは、彼は期待されたよりもずっと少ない時間しかプレーできていないことだ。 スペインのテレビでは「彼はピッチで引きずるように歩いている」とコメントされた。フランスでは「もうかつてのエムバペではない」と言われ、レアルのサポーターは「期待外れ」と不満を漏らす。スポーツ紙も一般紙も彼の 「ル・マレーズ」の原因を分析している。 ここ何年もの間、ヨーロッパのサッカーはエムバペに翻弄されてきた。パリ・サンジェルマン(PSG)にいながらもレアル・マドリードへの愛を語り、毎夏、「移籍する、しない」で周囲を騒がせてきた。そんな彼がマドリードにやっと移籍したのは、PSGで7シーズンを過ごし、契約満了を迎えた25歳の夏のことだった。 私はこれまでずっとエムバペの成長を見てきたが、現在、彼はそのキャリアにとって最悪の危機に直面していると言えるだろう。 PSGで何年もチャンピオンズリーグ(CL)優勝を果たせなかった時も、エムバペは非難され、疑問視された。しかし、現在の状況はもっと深刻だ。なぜなら以前、彼の傍らにいたのは、彼をサポートするベテランのスター、リオネル・メッシとネイマールだったが、いまエムバペの傍らでは、より若くて未来ある選手がどんどん育っているからだ。