いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向
ペロブスカイト太陽電池、主要な3タイプの特徴と違い
ペロブスカイト太陽電池は、以下のタイプに大別される。「フィルム型」「ガラス型」「タンデム型」の3つだ。 フィルム型 フィルム型は、軽量で、薄く、曲げることもできるというペロブスカイト太陽電池ならではの特長を最大限に生かしたもので、水平・垂直面はもちろん、湾曲のある建物壁面など従来は設置が難しかった場所にも導入可能だ。国際的にみて日本が最も進んでいるのがこのフィルム型であり、大型化や耐久性といった製品化の鍵となる技術でも海外勢をリードしている。 ガラス型 ガラス型は、透過性のある建材一体型の太陽光パネルであり、ビルや住宅の窓ガラスの代わりとして設置できる。新築はもちろん、既存建築物のガラス建材の置き換えも可能という点で、大きな導入ポテンシャルが期待できる。また、フィルム型と比べて耐水性が高く、耐久性を確保しやすい点もメリットだ。研究開発は、中国はじめ海外勢の勢いが強く、競争は厳しさを増している。 タンデム型 タンデム型は、シリコンとペロブスカイトを重ね合わせた太陽電池であり、理論的にはシリコン系太陽電池を大きくしのぐ変換効率を得ることができる。現在普及しているシリコン系太陽電池からのリプレースが期待されており、世界的に巨大な市場が見込まれている。ガラス型同様に競争が激化してきているが、国内メーカーには原材料の一つであるシリコン調達の問題が立ちはだかる。 ペロブスカイト太陽電池で注目の国内企業 ペロブスカイト太陽電池に関する特許件数をみると、近年は中国企業の躍進が目立つ。しかし、そもそもペロブスカイト太陽電池は、宮坂力氏(桐蔭横浜大学特任教授)が2008年にまとめた論文に端を発するもので、日本発の技術であるといって良い。早くからこの研究に着目し、開発に取り組んできた企業も少なくなく、その成果は着実に実りつつある。 例えば、積水化学工業は、30cm幅のフィルム型ペロブスカイト太陽電池のロールtoロールでの連続生産を実現しており、耐久性10年相当、変換効率15%を達成。今後は1m幅での製造プロセスの確立、耐久性や発電効率のさらなる向上に向けた開発を進め、2025年の事業化を目指すとしている。また、2023年11月に、世界初となる高層ビル壁面への1MW超フィルム型ペロブスカイト太陽電池の導入計画を発表。2024年4月には、恒栄電設、エム・エム ブリッジと共同で、国内初の浮体式ペロブスカイト太陽電池をプール上に設置する実証実験を開始した。 また、パナソニックは、既存の窓ガラスからの代替を目指して、建材と一体になったガラス型ペロブスカイト太陽電池の開発を加速させている。2023年8月からは神奈川県藤沢市にあるFujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)内のモデルハウスに試作品を設置し、実環境下での実証実験も行っている。 2024年6月19日に行われた第2回 官民協議会では、両社とともに、カネカ、東芝、アイシン、エネコートテクノロジーズがプレゼンターとなり、ペロブスカイト太陽電池開発の最新状況と社会実装に向けた取り組みを発表した。その他にも、キヤノンが2024年6月18日に“ペロブスカイト太陽電池の耐久性と量産安定性を向上させることが期待される高機能材料の開発”をリリースするなど、いままで太陽電池に関わってこなかったメーカーも含め、国内各社の動きは活発化してきている。