【バスケ】岸本隆一が感じる「区切り」と新シーズンへのワクワク感 多くの優勝メンバー退団で“転換期”を迎える琉球ゴールデンキングス
沖縄、全国で広がる琉球ファン「共感できる部分が…」
タイトルを手にすることはできなかったが、3シーズン連続のファイナル進出は紛れもない偉業だ。 Bリーグの前身の一つであるbjリーグで4度の優勝を達成したが、Bリーグ開幕初年度は29勝31敗で負け越し。そこから8シーズンを経て、離島県に本拠地を置くクラブがここまでBリーグで存在感を高めることになるとは、地元沖縄出身の岸本も「全然想像できなかった」と言う。 昨シーズンは、沖縄アリーナのホーム平均来場者数はリーグトップとなり、アウェー戦でも常に多くのファンが声を枯らした。近年の好成績が人気を底上げしていることは間違いないが、岸本は「僕の主観」と前置きした上で、別の要因にも触れた。 「特に昨シーズンは浮き沈みが激しいとされるチームで、みんなが共感できるところが多かったのかなと思っています。(観ている人も)いろんな生き方があって、うまくいくことばかりじゃない。むしろうまくいかないことがほとんど、というのが人生だと思う。それでも前を向いて、結果を残そうとしたことに対して、少なからず観てる人にとって共感できる部分があったのかなと解釈しています」 プロスポーツ球団の人気は、何も成績だけに左右されるわけではない。琉球は本拠地が離島県なため、アウェー戦の度に飛行機移動を強いられ、コンディションを維持する上での不利性がある。特に昨シーズンはEASLでの試合で海外移動もあった。経営面においても都市部と違って地元に大資本の企業が多くはないため、様々な工夫が求められる。 岸本が「共感」という言葉で表現したように、クラブの“生き様”そのものが、観る人の心に何かを訴え掛ける力を持っているのかもしれない。
「寂しいですよね」退団した優勝メンバーへの想い
来季で所属13シーズン目を迎える岸本。現在の桶谷大HCを含め、これまで5人のヘッドコーチの下でプロキャリアを積んできた。「同じユニフォームは着ていますが、ヘッドコーチも変わる中で常に自分も変化を求められていますし、毎シーズン違うチームという感覚です」と話し、毎年新鮮な気持ちで開幕を迎えることは変わらないという。 ただ、冒頭で記したように、今オフは直近3シーズンの隆盛を共に築いた田代や今村、牧など多くの選手がチームを去った。 「気持ちだけで言えば、寂しいですよね」 感傷的な言葉を口にし、彼らに対する率直な想いを続けた。 「今までたくさんのチームメイトとプレーをさせてもらってきましたけど、僕の中では優勝を経験するというのは一つ特別なことです。一緒に優勝を経験したメンバーがチームを去るというのは、いつもとは違う気持ちになりますよね。理屈抜きに言えば、もっと長く一緒にプレーしたかったな、というのは正直思っています」 特に昨シーズンはBリーグ、EASL、天皇杯を合わせ、リーグで最も多い77試合を戦い、最も長い期間、試合を行ったチームとなった。タイトルを取ることは叶わなかったが、共に過ごした約8カ月間は濃密な時間だった。 「良い時も苦しい時も一緒に経験して、例年になく、みんなで過ごす時間が本当に多かったです。バスケ以外でも一緒にご飯を食べたりして。何かに爆笑することも多かったです。何に対してかは覚えてないですけど(笑)。印象深いシーズンでしたね」 Bリーグ初年度の2016-17シーズンが終わった後のオフも、伊佐勉HCを筆頭にアンソニー・マクヘンリーや山内盛久、喜多川修平など多くの主力が退団し、編成がガラっと変わったことがあった。似たような経験はしているが、こればかりは「慣れないですよね」とセンチメンタルな気持ちをのぞかせる。 ただ、胸中には寂しさだけではない想いも混在しているようだ。 「一つ区切りが付いて、そして、また一つ何かが新しく始まったような感覚もあります。みんなまだまだキャリアは続いていくし、始まりという要素はあっても、終わりじゃない。人生何があるか分からないですし、どういった巡り合わせでまた一緒に仕事をできるかも分からない。自分も含め、みんな道の途中です」 退団したメンバーと対戦することも「純粋に楽しみ」だと言う。