IT系フリーランス男性を追い詰めた役所の非情 「自力で部屋を借りる事がこんなに難しいとは」
2カ月間のアパートでの暮らしは想像以上に苛烈だった。 まず業者から2万円の布団や3万円の中古テレビ、1万6000円分の食料などを買うよう迫られた。食料は乾麺やレトルト食品が中心でどうみても値段に見合わない。布団は同じものがネットで約4000円で売られているのを見つけた。そもそもこれらを買ったら保護費が残らないと訴えたが、路上生活や違約金への恐怖から従わざるを得なかった。 また、アンペア数の上限が低いのか、電子レンジやパソコンなどを同時に使うとたびたびブレーカーが落ち、火花が散ることもあった。
部屋の中は極寒だったが、エアコンを使うには室内灯などを消さなければならず、仕事ができる環境ではなかったという。 ■ケースワーカーに業者の手口を告発するも… しかし、災難はこれで終わりではなかった。業者に続いてマサルさんの再スタートを阻んだのは行政だった。 マサルさんが生活保護の申請をしたのは横浜市。実はマサルさんは早々に担当ケースワーカー(CW)には業者の手口を告発した。割高な家賃に見合わない室内の様子や、押し売りされた物品、違約金について書かれた合意書などの写真も見せた。しかし、CWは「でも、ご自分で契約されたんですよね」と聞き流すだけでまるで他人ごとだったという。
一方でマサルさんが「ちゃんとした住まいがあればすぐ働けます」と伝えると、「部屋はこちらで用意するので安心してください」とも言われたという。マサルさんはその言葉を拠り所に劣悪なアパート暮らしに耐えた。ところが、CWから紹介されたのは、簡易宿所である「ドヤ」と無料低額宿泊所(無低)。「普通の賃貸アパート」への入居を希望したが、「それはできない」と取り付く島がなかったという。 仕方なくドヤ街に赴いたマサルさん。ところが、管理人と思われる人からは「あなたみたいに就労できる人が入ると、CWが訪問に来るのでほかの入居者が嫌がる」という謎の理由で入居を断られた。