六本木「KOBAYASHI」が挑戦する中国料理の新しいカタチ
「桃の木」の立役者、小林武志の新たなチャプターがはじまった。 【写真を見る】KOBAYASHI料理の数々をチェック!
小林料理
6月6日に六本木にレストラン「KOBAYASHI」がオープンした。シェフは小林武志。2005年にオープンし、当時の話題をさらった三田「御田町 桃の木」の立役者だ。しかもカウンター主体の店。料理は中国料理を小林流に進化させたという意欲作が並ぶ。いまなぜこのタイミングで自身の名を冠した店を出したのか。本人に訊く。 「ちょうどいいタイミングで一緒にやっていこうという方が現れたのが大きいです。今まで『桃の木』という名前で中国料理を出していましたが、突き詰めていくとどんどんスタイルが変わって、周りの方にも“これって中華じゃなくて、小林料理だよね”と言われることが多くて。確かに日本料理、フレンチやイタリアンでもジャンルを超越していくと、そのシェフの味になりますよね。そこを目指したいという意味もあり、シンプルに自分の名前をつけました」 個室のコースは2万4200円(サ別)から。写真の「茄子の唐揚げ 山椒 唐辛子風味」は乾煎りした唐辛子と山椒の実に揚げた茄子を入れ、ひたすら鍋をふるって香りをまとわせたもの。中国料理ではなく、小林オリジナルの料理だ。 店内にはカウンター席8席、個室は全5室あり、それぞれ違うメニューが提供される。カウンターは「ULTRA・K」と名付けられ、型にとらわれない料理がコース仕立てで、個室は中国料理を主体としたこれまでのシグネチャーディッシュが並ぶ。カウンターへのこだわりは技術によって、料理の味が格段に変わるということを伝えたいからだという。 「三田のお店(御田町 桃の木)は、オープンキッチンでした。なので自分が作った料理を説明できますし、背中越しに鍋を振るその姿が好きだと言ってくださる方も多くて。 あと、私は技術を見てほしい。たとえばジャガイモといんげんの炒め物でも、作る工程を見たら、シンプルだということがわかるじゃないですか。でも、食べたら驚くほどおいしい。これってなんだ? って。いい料理ってやっぱりシンプルなんですよ、すごく」 例えばカウンター席のコースに登場する「KOBAYASHI特製 XO醤 ULTRA style」は、さばきたての伊勢海老やはまぐりをXO醤で火入れし、太白ごま油でアヒージョ風に仕立てたシンプルなもの。しかしXO醤で使われる干し貝柱は、スタッフ全員が一丸となって毎日手で細かく割いているという途方もない作業から生まれている。シンプルな調理法であっても、手間をかけることには惜しまない。「やりたいことが詰まっているから今は楽しくてしょうがない」と小林は笑う。高級中国料理を謳うレストランは数あれど、これほど食べるのが好きな人と行きたくなる店はなかなかない。会食やデート、または友だちとなどは当然だが、とにかく本気で食べるのが好きな人とぜひ一緒に訪れたい店だ。 ■小林武志 1967年生まれ、愛知県出身。大阪・辻調理師専門学校を卒業後、同校で講師を務める。2005年に三田で「御田町 桃の木」を開店。2024年6月6日に「KOBAYASHI」をオープン。 ■KOBAYASHI 住:東京都港区六本木3-3-29 六本木アーバンレックスB1 予約専用TEL:050-1809-4801 営:17:00~23:00 休:日・その他不定休 URL:https://shiroi-r.com
編集と文・岩田桂視(GQ)