ここにハンコを…生き別れの亡き父の遺産がいつの間にか見知らぬ女性の手に。〈47歳女性〉の前に突然現れた招かれざる訪問者の「まさかの正体」とは?【相続の専門家は見た!】
父親の建物の価値は?
父親名義の建物については築年数15年くらいですが、間取りは一般的なファミリータイプのような需要のあるものではなく、父親の家と、祖母と父親の妹の家の二世帯住宅だったようで、玄関が別々になっている1Kが父親が生活していた部屋ということでした。 建物1棟は父親名義ながら、父親が使っていたのは全体の4分の1、残る4分の3は妹と祖母の家だったようです。建物は40坪、建物の固定資産税評価は800万円分あります。土地は60坪、売る場合は、4,200万円から5,000万円くらいの間の販売価格になりますので、現在の建物を解体して更地にしたほうが売りやすいということのようです。 けれども香さんにとっては、父親の相続や財産のことをなにも知らされていないどころか、父親が亡くなったこと自体初耳でした。このまま財産となる建物も取り上げられるとなるとあまりに理不尽で、すんなりハンコを押していいか、迷うところでしょう。 山田さんが、香さんの建物を買い取るなり、いくらか香さんに費用を払うようにしてもらうなりしないと、決断できないのは無理もありません。 そこで、当社は業務提携先の弁護士と相談し、どのようにするのがいいか検討しました。
土地の使用貸借は、借主の死亡により終了する
土地と建物の所有者が違う場合、建物の所有者は土地の所有者から土地を借りている状態といえます。本来であれば地代や権利金を払って建てるところですが、親族の場合はタダでかりている使用貸借がよくあるパターンです。 香さんの父親の場合も、おそらく使用貸借の状態で土地を無償で借りて、建物を建てたのではないかと推測されます。父親が先に亡くなっていますので、建物を妹に遺贈する手続きをしていれば香さんに話が来ることはなかったのですが、そうした手続きはされておらず、現在も建物の名義は亡くなった父親のままとなっています。 今回法的に問題となるのは、借主である父親が亡くなっていることから死亡により使用貸借契約が終了するか否か、という点になります。 当社の業務提携先の弁護士に確認したところ、この点については、民法597条3項において、「使用貸借は、借主の死亡によって終了する」と規定されており、原則論でいえば、この条項が適用され、借主死亡により使用貸借契約は終了するため、建物所有者は、建物を収去し、土地を明け渡す必要がありますという回答でした。
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