日大の裏面史から描く「悪党」たちの出世物語 ラスボスたちが集った「ちゃんこ屋ノワール」
かくのごとく巨大利権と化してしまった日大は、田中らの逮捕を機に組織を正常化させるために林真理子を理事長とする新体制となった。けれども、林体制の監事が「ちゃんこ料理たなか」に20回通っていたことが判明するなど、負の遺産を抱えたままとなっている。 『魔窟』と同じく東洋経済新報社が刊行した『巨大システム 失敗の本質』(2018年)は、不正が組織を壊滅させるメカニズムとして、複雑性のなかで不正が生まれ、同質性によってそれが組織内に蔓延し、隠蔽されることをさまざまな事例から論じている。
日大もまさにそれだ。巨大であるがゆえに複雑で、また運動部の活躍によって大きくなっていった大学は運動部関係者によって支配され、そして喰い物にされていった。その実相を描いた『魔窟』に、読者はピカレスクもの(悪党の出世物語)として惹きつけられるのと同時に、普遍的な組織の腐敗と混迷の歴史をここに見ることになるだろう。 (敬称略)
urbansea :ノンフィクション愛好家