グローバル化が進むと「封建的な世界」になる理由 ナショナリズムこそリベラルな社会の前提条件
この結果に私は気をよくして、2023年の12月に、学生の卒論の研究を指導しながら、私も自分の科研費を使って学生と一緒に調査をしました。一般社会人300人を対象に社会調査会社に委託して、なるべく日本人のデモグラフィックな縮図をつくり、いまお話ししたものと同じ質問をしてみました。すると、設問2の回答として、「タイプ1」の「グローバル化」型を望んだのは、学生よりも少し多くはありましたが16%で、「タイプ2」の「国際化」型を望んだのは84%でした。
中野:その意味するところは、大学を卒業するとグローバル化するってことですね(笑)。 ■高校までの日本の学校教育は「国際化」型 施:おそらくそのとおりで、高校までの日本の学校教育は、「国際化」型でやっているところが多いんです。実際に教科書を調べてみたら、小中高では、だいたい「国際化」型の、違いを認め合いましょうという話で進められている。逆に大学は「グローバル化」型になっています。なので、九大ではまだ高校を出たての子たちに聞いたので、「国際化」型と「グローバル化」型を比べると95対5になったと言えるかもしれませんね。
ただですね、300人のほうの調査で見てみますと、統計的にはおそらく有意ではなさそうですが、日本は欧米で言われているのと違って、高学歴の人のほうが、どちらかといえば「国際化」型のほう選ぶ人が多い傾向があると言えるかもしれません。まだきちんと分析していないので結果の数字を眺めたうえでの推測にすぎませんが。 欧米では、デイヴィッド・グッドハートがエニウェア族、サムウェア族と分けて、エニウェア族、つまり大都市に住む高学歴、高収入の者のほうがグローバル化を望むと述べています。日本ではその傾向はみられそうもありません。ここは文化の違いかもしれません。
佐藤:庶民層がグローバリズム志向とは、グッドハートの主張をくつがえす結果ですね。 施:ええ、そうかもしれません。だから、ここをいかに理解すべきかはもう少し考える必要があります。いくつか同じような質問をしたので、それも一部紹介させていただきますね。 ■日本の4人に3人は「国際化」型の政策を好んでいる 施:これは冒頭で触れた今年3月6日の産経新聞の私のコラムでも取り上げたものですが、望ましい日本の経済政策をどう考えるかという質問です。選択肢は、①が「日本経済をグローバル市場の中に適切に位置づけ、投資家や企業に投資先として選ばれやすい日本を実現すること」。②が、「日本国民の生活の向上と安定化を第一に考え、国内に多様な産業が栄え、様々な職業の選択肢が国内で得られるようにすること」。①は日本がここ30年ぐらい追求してきた追求してきた「グローバル化」型の経済政策で、②が「国際化」型と言えると思うんですが、結果は、「国際化」型のほうを支持する人が多くて73.3%です。