グローバル化が進むと「封建的な世界」になる理由 ナショナリズムこそリベラルな社会の前提条件
■「グローバル化」と「国際化」の違い 古川:「グローバル化」と「国際化」は全然違うということは、私も大学の授業でよく話しています。 言葉の意味を考えてごらんなさい、と。「国際」というのは「国の交際」なのだから、まず国が前提になっている。それぞれに独立した国がまずあって、その国同士が交際して関係を築いていくのが「国際」。英語で言えばinter-nationalismで、やはりまずナショナリズムに基づく独立したネイションがあって、それが相互に関係するのがインター・ナショナリズムです。
それに対して、グローバリズムというのは、「世界は一つ」「地球は一つ」と考えるわけですから、インター・ナショナリズムが前提にしている国家やナショナリズムを否定します。 「ね? だから正反対でしょ?」と説明すると、誰だって理解しますよ。たぶん中学生でもわかることでしょう。それなのに、わが国の学者や政治家が両者を同一視しているのは、本当に不思議です。これはいったい、どうしてなんでしょうか? 施:それでいうと、興味深いアンケート結果があります。結論から言うと、実は一般の方のほうが「グローバル化」と「国際化」の違いを認識していて、「国際化」のほうを好んでいるのではないかという結果です。
施:2022年の4月に九州大学での授業の最初に、私の話を聞く前のまっさらな状態で、学生74人に聞いたんですね。1つ目はこんな設問でした。「外国や外国の人々との活発な交流が大切だと思いますか」と聞いたら、99%が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えました。 2つ目の設問はこうでした。「あなたが望ましいと思う交流のあり方は、タイプ1とタイプ2のどちらのタイプに近いですか」。ここで「タイプ1」は、国境線の役割をなるべく低下させ、人やモノなどが活発に行き交う状態をつくり出し、さまざまな制度やルール、文化、慣習を共通化していくような交流。これは、アンケートには書きませんでしたが、「グローバル化」型の交流ですね。「タイプ2」が、国境線や国籍を維持したままで、また自国や他国の制度やルール、文化、慣習などさまざまな違いも前提としたうえで、互いによいところを学び合う交流。これも書きませんでしたが、「国際化」型の交流を意味します。その結果、「タイプ2」の「国際化」型を選んだ人が95%だったんですね。「タイプ1」はたったの5%でした。