「忘年会でビールをこぼされても大丈夫」→真冬に“意外な商品を大ヒットさせた”クリーニング店のPOP、その予想外の戦略とは?
【成功事例】真冬にものすごい数の「防水スプレー」が売れたワケ
残る業績対策は「イノベーション」ということになります。これが冒頭で紹介した「生活者も気付いていない欲求を創造すること」を指し、中小企業が生きる道であると同時に、持続的な賃上げ策の抜本策だと考えます。 イノベーションという言葉がひとり歩きをしており、解釈が曖昧になっているので、ここでは「感性価値創造」と言い換えることにします。「欲しい」「素敵」という気持ちを喚起する商品・サービス、売り方、ディスプレイなどの創出を意味します。 感性価値創造には、新たな市場を開拓する潜在能力があります。可能性に制限がない「プラスサムゲーム」なのです。 私の知り合いに、見事な感性価値創造を行った社長がいるので事例として紹介します。関東地方でクリーニング店を営む友人が「真冬に防水スプレーを売った」という事例です。 1年の中で、最も防水スプレーが売れるのは梅雨時期です。その次は台風シーズンで、最近では、豪雨が降る真夏にも売れるでしょう。一方、最も売れないのが冬ですが、同店では、12月と1月に、ものすごい数を売りました。どのように売ったのでしょうか? 12月と言えば忘年会が、1月と言えば新年会がありますね。飲み会では頻繁にお酌が交わされますが、そこでお酒をこぼされ服を汚した経験は誰にでもあると思います。しかも、そういう場には、いつもよりも良い服を着ていくと思います。 そんな場面を想像し、店主は次のようなPOP(商品の特徴などが書かれたカード)を作りました。 「忘年会でビールをこぼされても大丈夫」 年が明けたら「新年会でビールをこぼされても大丈夫」に差し替えました。 見事な実践だと思います。POPを作らなければ、お客様は防水スプレーの新たな使い方を知ることはなかったでしょうから、店主が新たな価値を創造したということになります。この実践からは、感性価値を創造すれば、市場は新たにつくることができるという洞察を得ることができます。