「もしハリ」「もしトラ」 内向き米国に備えよ
トランプ氏:陣営内で割れる外交・安保のスタンス
トランプ氏が再選した場合はどうなるであろうか。1期目の外交や、選挙中の発言などから次のように言えるだろう。関税の引き上げと、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」からの再離脱により、米国第一主義を再び強化することは間違いない。関税に関しては、1期目は通商政策の一環として貿易赤字の削減が主目的だったが、2期目は産業政策の一環として国内産業の復活に力を入れることになるだろう。CPTPPへの加盟はあり得ず、日本や米国などによる新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の交渉についても、米国から他国への市場参入がないという理由で離脱するかもしれない。 日本を含めた同盟国に対しては負担の分担と自律性を求める一方、ロシアや中国、イラン、北朝鮮など強権主義国家に対しては圧力と取引を持ちかけることになるだろう。ウクライナ支援については、トランプ氏は停戦仲介に関心を示すものの、具体的な手法は明らかでない。 同氏の周辺では、前国務長官のマイク・ポンペオ氏や大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたロバート・オブライエン氏らがウクライナへの軍事支援強化を主張する一方、元副大統領補佐官(国家安全保障担当)のキース・ケロッグ氏や国家安全保障会議の首席補佐官兼事務局長だったフレッド・フライツ氏らは支援打ち切りを主張する。再選の際にトランプ氏がどちらの声を聞き入れるか、振れ幅は大きい。 北大西洋条約機構(NATO)に関して、トランプ氏は国防費の対国内総生産(GDP)比2%を達成していない加盟国に対して、集団的自衛権の行使を制限する可能性はあるだろう。中東では、イスラエル支持をさらに強める一方、パレスチナ支援は削減し、2国家解決にも消極的になる。東アジアでも不確定要素がある。台湾政策では、戦略的曖昧性を維持しつつ、中国との貿易交渉で台湾を外交カードとして使うかもしれない。北朝鮮とは、核保有国であることを前提として、軍備管理交渉を行うこともあり得る。 ウクライナ支援に消極的なトランプ陣営のシンクタンク「米国第一政策研究所」の影響力が強まるとみられるが、8月に発表された移行チームの事務局長など主要なポストは決まっていない。具体的な人事は再選後になるとみられ、トランプ氏周辺にいる国際派と米国第一主義派の力関係については、現時点での予測が難しい。