3~5月に残業すると手取りが減るって本当? 全く残業しなかった場合と比べてどれくらい差が出る?
会社員の健康保険や厚生年金の保険料の算定に用いられる「標準報酬月額」は、毎年1回7月に見直されます。これを「定時決定」といい、そのとき決定された標準報酬月額が1年間適用されます。そして、この定時決定の算定基準となるのが4~6月の報酬月額であることから、多くの会社員は3~5月の残業を抑える傾向にあります。 今回は、標準報酬月額の定時決定制度について説明するとともに、標準報酬月額の違いによる手取り額の差について解説します。
標準報酬月額の定時決定とは
1.標準報酬月額 会社員が毎月の給与から支払う健康保険と厚生年金の保険料は、標準報酬月額に保険料率をかけて計算され、事業主と被保険者が折半して支払います(※1、2)。 毎月の健康保険の保険料:標準報酬月額×健康保険の保険料率 毎月の厚生年金の保険料:標準報酬月額×厚生年金の保険料率 標準報酬月額は下表のとおり、健康保険は1等級(5万8000円)から50等級(139万円)の50段階に、厚生年金は1等級(8万8000円)から32等級(65万円)の32段階に区分されています。
2.標準報酬月額の定時決定 標準報酬月額は、事業主が7月1日現在で使用している全被保険者の3ヶ月間(4月、5月、6月)の報酬月額から算定され、その額は9月から翌年の8月までの保険料の算定に適用されます(※3)。 なお、標準報酬月額の対象となる報酬には、基本給のほか、通勤手当、住宅手当、早出残業手当などが含まれます(※2)。そこで、4~6月の報酬が増えないように、3~5月の残業を控える傾向が見られます。
標準報酬月額と社会保険料
健康保険の保険料率は、企業が加盟している健康保険組合によって異なります。ここでは、多くの中小企業が加盟する全国健康保険協会、いわゆる「協会けんぽ」の保険料率を紹介します。なお、40歳から64歳までの介護保険の第2号被保険者は、介護保険料分を健康保険料に含めて徴収されます。 協会けんぽの健康保険料率は、都道府県別に定められていますが、東京都の健康保険料率は以下のとおりです(※4)。 介護保険第2号被保険者に該当しない場合:10.00% 介護保険第2号被保険者に該当する場合 :11.82% 被保険者は、標準報酬月額に健康保険料率をかけて算定された健康保険料を、事業主と折半して支払います(※1)。 2.厚生年金の保険料率 厚生年金保険料率は、全国一律の18.3%となっており、被保険者は、標準報酬月額に厚生年金保険料率をかけて算定された厚生年金保険料を、事業主と折半して支払います(※2)。 3.標準報酬月額と社会保険料 標準報酬月額に応じた健康保険料と厚生年金保険料は、東京都における協会けんぽの被保険者の場合で、下表のとおりとなります。