「野球をやめようかな、って何度も思った」主将を救った新進気鋭校 光英VERITASが形作ろうとする新しい高校野球
やりたいのにできない苦しさを味わった主将が見つけた居場所
森川は市川シニアから入学した高校通算12本塁打のスラッガー。186センチ88キロというがっちりとした体格には、舘野監督も「体格はがっちりしている」と評価している選手だ。だが先述した通り、中学時代に大きな壁にぶつかった。当時のことを森川は「野球をやめようかなって、何度も思うことがあった」と語ったうえで、続けて振り返った。 「行きたかったんですけど、体調が回復しなくて学校には行けないし、チームの練習にも参加が難しかった。中学3年に進級してから学校には行けるくらい回復したんですけど、チームには戻れなかった。 ただ、所属は残していたので、最後の夏は応援でスタンドにいましたが、当時は学校に通って、帰宅したら寝るという生活で、『野球をやめようかな』って何度も思いました」
そんな森川の野球人生に、再び光を刺したのが、光英VERITASとの出会いだった。 「母に『VERITASに行ってみたらどう』っていうことで紹介してもらったので、体験会に参加したんです。そのとき、先輩たちがすごく楽しそうに野球をやっていて、『こんなに笑顔でやっているチーム、見たことないな』と思うくらい明るい雰囲気で、学年関係なく仲良くて楽しそうでした。と同時に、『この輪に一緒に入って戦いたい』って思いが強くなって、入学することを決めました」 その後、森川は体調を気を付けながら、できる範囲で高校野球に向けて準備をし始めたという。「食事についても、どんなものを食べるか気を付けながら過ごしました」という徹底ぶり。こうした経験をすごしたからこそ、森川は苦しんだ中学時代を、こうも振り返る。 「いざなくなるってなると、やりたいのにできない苦しさを味わえた。だからこそ、今は野球ができることが幸せですし、今となってはあの時期があって良かったと思えるようになりました」
VERITAS流の自主性で勝ち上がる!
森川のように中学時代に挫折しても、光英VERITASでは主力になれるチャンスはあるし、高校野球に打ち込める環境がある。その環境が整っているのは、舘野監督の考えがあるからだ。 「私の母にある時、一つ言われたことがありまして、『どんな子でも絶対にやめさせちゃダメ。悪いことをしてもいつか』みたいなことをいきなり言われたんですよね。 公立校を指導していた時は、野球以外でいろんな問題がありました。そういったこともあったからだと思いますけど、その一言があったから、野球を通じて好青年といいますかどんな選手でも辞めさせないことに極力こだわりましたし、『いつかはわかってくれる』というのが根本にあって、許せるんですよね。 だって、人間どこか弱いところもあるし、逃げたい時もある。気分転換をしたい時もある。何も間違えずに今日まで生きてこられたか、と考えれば、そうじゃないと思うんで」 そう語ると、続けて、「だから彼女とデートして休んでもいいよ、って選手にも話したことはありますよ」とやや笑みをこぼしながら、光英VERITASなりの自主性の形を語り始めた。 「もちろん無断で休まないようには伝えています。心配しますから。でもそれで気分転換になるなら、やる気になるなら、次の練習で気合が入るならば、と思っています。昔ならそんなこと許せないでしょうし、選手たちの中でもサボったと思う人がいます。そういう選手が試合に出ることが許せないから。でも、気分転換が必要なことはわかると思うんです。だから、逃げ道をあげるといいますか、そう言った道もあって選べるのがウチの自主性ですし、必要だと思うんです」