資金調達の手法が過渡期、株高や利上げでCB脚光-発行1兆円超えも
(ブルームバーグ): 日本銀行が17年ぶりの利上げを行い金利環境が変化する中、日本企業は株高も追い風に比較的低コストで資金を調達できる転換社債型新株予約権付社債(転換社債、CB)への関心を高めている。
ブルームバーグのデータによると、日本でCBを含むエクイティーリンク債を通じた資金調達額は2023年度に約9250億円と、15年度以来の高水準になった。発行件数は23で、前年度の5倍以上に増えた。
みずほ証券の武井隼人エクイティシンジケーション部長は「日本の金利や株価の上昇に伴い、CBや株式を活用したファイナンスのニーズが高まってくる」と指摘し、資金調達の手法は過渡期にあるとの見方を示す。好業績を背景に海外企業を買収する動きも増える中で、CBのように普通株式の発行と借り入れや社債発行などの中間に当たるメザニンファイナンスを検討する企業が増えるとみている。
日銀がマイナス金利解除後も追加の利上げを行うとの観測が根強く、企業にとって金利上昇は社債を発行する際にコスト増となりやすい。その点、CBは債券の特性を持ちながら株式に転換することも可能なため、普通社債と比べて利率が低く設定される。加えて、当該企業の株価が上昇すればCB価格も上昇、さらに株式に転換して株高をフルに享受することもできるといううまみがある。
大和ハウス工業は1月に2000億円のCBを発行した。日本市場での過去3年間で最も大型の案件だ。昨年の9月と11月にはJFEホールディングスや神戸製鋼所といった鉄鋼企業も相次いで発行を決議した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の寺嶋芳章エクイティ・キャピタル・マーケット副部長は、株式相場が好調な今は「CBが選択肢として良いと企業は判断しているようだ」と話した。
東京証券取引所が上場企業に対して資本コストや株価を意識した経営を呼びかけていることも背景の一つだ。CBの発行で得た資金で自己株を取得するリキャップCBと呼ばれる財務手法を用いると、企業が効率的に利益を上げているかを示す自己資本利益率(ROE)は短期的に改善しやすい。