〈政治とメディア〉テレビの選挙報道は史上最低に ~データが示す2014年 総選挙報道の実態~ 逢坂巌
昨年、総選挙がおこなわれ自民党が圧勝した。その際、複数の全国紙でテレビの選挙報道が萎縮していると報じられ話題になった。今回あらためてデータを検証してみるとテレビの選挙報道には大きな変化がみられた。 インターネットが浸透したとはいえ、依然、大きな影響力を持つテレビ。昨年末の選挙に関連して博報堂DYメディアパートナーズなどがおこなった「若者が投票活動に参考にした情報源」調査(※1)においても、NHKや民放のテレビを参考にしたと答える割合は、インターネットを情報源にしたと答える割合を倍するほど多かった(図1)。インターネットに親和性が高いとされる若者世代においても、依然、選挙時におけるテレビの影響は大きいといえる。 (※1)今回の衆院選で投票をおこなった20代の男女200人を対象にしたインターネット調査。博報堂DYメディアパートナーズ・株式会社NEWSYプレスリリース「ネット選挙普及も、依然マスメディアが強い?」2014年12月19日
それでは、選挙時にテレビはどのような報道をおこなうのだろうか。筆者は、この10年ほど選挙時のテレビ報道を研究してきたが、今回、1つのパターンを発見したので、ここに報告したい。
衆議院選挙時のテレビ報道量を比較すると
まずは、テレビ報道の報道量を見ていただきたい。上の図2は、21世紀にはいっておこなわれた5回の総選挙における選挙関連情報の報道量の動きを表したものである。縦軸は報道量(単位:時間)、横軸は選挙までの日数をそれぞれ示している。分析の対象は東京キー局のニュース番組とワイドショー(情報系番組含む)で、期間は解散日から選挙前日まで。1日ごとにどれほどの選挙関連の話題が報じられたかを、コーナーや報道トピックの項目ごとに秒単位で測り、それを集計したものである(図2)。 データは、テレビ番組の放送内容を記述したTVメタデータの提供と、調査・分析をおこなっている株式会社エム・データ()のものを使用した。同社は、テレビデータ分析の日本における魁(さきがけ)をなす会社で、専門のテレビウォッチャーが全局24時間の放送内容を放送時間と共に文字データ化している。これによって、特定の話題、会社や人物、商品、CMなどがテレビでどの時間にどれ程どのように報じられたのかが詳細に把握できる。筆者は、2005年の郵政選挙の時以来、同社の協力を得て、選挙時のテレビ報道の分析をおこなってきた。今回はそれらの蓄積を踏まえつつ、2014年の総選挙時のテレビ報道について考えてみたい。 さて、過去5回のデータからは、様々なことが読み取れる。グラフの折れ線は長さそのものが選挙ごとに異なるし、報道量にもいろいろと増減が見られ、選挙報道の盛り上がりも選挙ごと、そして期間中にも変化している。 まず、横の長さが異なるのは、それぞれの選挙によって解散から投票日までの期間が異なるためである。この10年間で解散から投票日までの期間が最も長かったのは、2009年の選挙で解散から投票日までは40日間あった。憲法では、解散から40日の間に選挙をおこなうべきことが規定されており、この日数は憲法上の最長期間でもある。