〈政治とメディア〉テレビの選挙報道は史上最低に ~データが示す2014年 総選挙報道の実態~ 逢坂巌
選挙時のテレビ報道:第1の山は「解散日」
これに対して、選挙までの期間が最も短かったのが今回の2014年だ。解散から投票までは23日間、09年と比べると17日間、2週間も短いものとなった。解散と選挙をいつにするかは、時の首相の最高の政治判断である。当然、自らに有利なように設定されることになるが、安倍首相は最も短くすることを選択したことになる。ちなみに21世紀にはいっての5回の選挙、それぞれの期間は上の表の通りである(図3)。 テレビ報道としては、まず第1の盛り上がりがこの解散日だ。この日は解散までの政局の動きや解散をめぐっての政界や有権者の反応などが大量に報じられる。また、「今回の選挙は○○選挙だ」などという選挙の命名も話題となり、選挙の雰囲気が作られはじめる。この10年間で解散日のテレビが最も盛り上がったのは05年の選挙である。解散日の報道時間は40時間、キー局の数で割ると各局6時間も報道していたことになる。この時、小泉純一郎首相(当時)は、深紅のカーテンを背景にした決然たる演説をおこなったが、このイメージがこの日何度も報じられ、解散は「郵政解散」、そして選挙は「郵政選挙」と名付けられることになった。 解散の後は実質的な選挙期間に入り、テレビ報道も活性化する。政治側の動きとしてはマニフェストの発表や候補者調整などがおこなわれることになる。一方、テレビではそのような政界の動きに加え、選挙の争点なども議論されはじめる。この時期は、公職選挙法上の選挙期間には当らず、ワイドショーや政治情報バラエティなども、比較的自由に議論や報道がなされてきた。 この部分でも歴代でもっとも多く報じられたのが05年総選挙。様々な刺客候補の擁立が大量に報じられ、「小泉自民党」対「郵政抵抗勢力」の枠組み(フレーミング)がつくられた。その結果、当初の民主党の楽勝ムードが一変した。解散の瞬間は、自民党の分裂選挙になるとして当時の民主党議員たちは喜んでいたが、解散日以降の報道によって民主党がかすんでしまったのだ。ちなみに、このときの民主党代表は、現代表の岡田克也氏だった。なお、この期間、報道量はカマボコ型の増減を繰り返すが、これは土日はニュース番組が少なく報道量が減るためである。