少女漫画誌「ちゃおデラックス」休刊ーー新人漫画家の“育成の場”である「増刊号」は役割を終えたのか?
■新人育成の場である増刊号 少女漫画雑誌「ちゃお」の増刊号として刊行されていた「ちゃおデラックス」が、2024年11月号(9月20日刊行)を機に休刊することがわかった。連載作品の多くは、WEBコミックの「ちゃおプラス」で連載が継続されるという。「ちゃおプラス」の内容の充実が図られる一方で、本誌の番外編や新人の読切が読める「ちゃおデラックス」の休刊を惜しむ声が上がっている。 【写真】「ちゃお」の付録だった推し活を応援する「CHEERFUL DAYS スケジュールブック」と「願いを叶える6色ペン」 かつて、あらゆる人気漫画雑誌には増刊号があったが、その多くが現在は休刊となっている。漫画雑誌にとって増刊号は極めて重要な意味をもつ。それは新人の育成の場として機能してきたためだ。漫画賞でデビューした新人漫画家は、いきなり“本誌”で連載ができるわけではない。まずは、増刊号で読切を描いて実力を試すのである。 そして、増刊号で人気が取れたらいよいよ本誌で読切を発表するか、その評判次第では連載に繋がることもあるのだ。雑誌のはベテランの漫画家と一緒に掲載されることで、読者に新人漫画家を認知してもらえるメリットがあった。対して、WEBコミックは読者はお目当ての作品だけを読むケースが多いといわれる。これでは新人育成の場として弱いのではないか、と指摘する漫画ファンは少なくない。 ■「ちゃお」の漫画家も反応 今回の休刊決定は多くの漫画家に衝撃を与えたようだ。既に、何人もの「ちゃお」に縁の深い漫画家がXにコメントを投稿している。「ちゃおデラックス」「ちゃおプラス」などで『ヴァンパイアの花嫁』を連載する小倉あすかは、「#ちゃおデラックスの思い出」というハッシュタグをつけ、こうポストしている。 「ちゃおデラックスが休刊すると聞かされて割と仕事にならんぐらいショックが大きかったです。この雑誌がなかったら私はここまで来ることはできなかったので本当に寂しいです。デビュー作からヴァンパイアの花嫁の連載まで読んできてくださって本当にありがとうございました」 また、「ちゃお」本誌や「ちゃおデラックス」で大人気のホラー漫画『人間回収車』で知られる泉道亜紀も、「ちゃおデラックス休刊…デビュー作から病棟少年までたくさん掲載していただきました。私の掲載場所のほとんどがちゃおデラックスだったから寂しい。長い間ありがとうございました」とポストした。 ■少女漫画雑誌は復活できるか 「ちゃおデラックス」が休刊に至った背景には、少女漫画雑誌が軒並み苦境に陥っていることが影響していると思われる。日本雑誌協会が8月7日に公表した2024年4月~2024年6月の3ヶ月ごとの平均印刷部数によると、「りぼん」が約11万8333部で、「ちゃお」が約10万6667部。かつて「りぼん」は約250万部、「ちゃお」は約100万部を突破していたことがあったが、部数が深刻に落ち込んでいることがわかる。 他の少女漫画雑誌の部数を見てみると、「花とゆめ」約4万2500部、「別冊マーガレット」3万7333部、「なかよし」約2万8667部、「Sho-Comi」が約1万2400部、「マーガレット」約1万1800部となっている。実売部数はもっと少ないはずで、書店でも少女漫画雑誌のコーナーは縮小されつつある。以前はコンビニにも配本が行われていたが、雑誌によってはゼロか、あっても1~2部というケースが増えているという。 かつては女の子が必ず通る道といわれた少女漫画だが、娯楽の多様化に伴い、新規の読者獲得に苦戦している。もちろん、近年の深刻な少子化も、少女漫画雑誌に影を落としているのは言うまでもない。今後、少女漫画雑誌の休刊が相次ぐと予想する編集者も多いが、逆境に置かれているからこそ、ヒット作は生まれる可能性もある。人気漫画が誕生し、少女漫画に再び注目が集まることに期待したい。
文=元城健