欧州議会選挙2024、「極右」「EU懐疑派」大躍進の理由…EU市民は何を思って右派に票を投じたのか?
緑の党の致命的な誤算
また、緑の党も壊滅的に票を減らした。同党は、前回19年の欧州議会選挙では20.5%の高得票を記録したが、今回はほぼ半減で11.9%(もう一つの与党である自民党は、元々支持率が低かったが、今回は一応、その低いレベルを維持)。 5年前の緑の党は、温暖化で地球が人間の住めない惑星になるというホラー的シナリオを拡散。多くの素直なドイツ国民はそれを信じ、人類の最重要課題は温暖化を止めることだと張り切った。その結果、子供たちは金曜日に学校をサボり、気候保護を叫んでデモ(=Fridays for future)に明け暮れたが、それを主導し、鼓舞していたのが緑の党だった。 当時、緑の党は、これら若い人たちが選挙権を持てば、皆、自分たちに投票すると思ったらしく、参政年齢を下げるよう強く主張していた。そして、実際に、今回の欧州議会選挙では16歳から選挙権が与えられた。 ところが、実は若者たちの心はすでに緑の党から離れており、それどころか、AfDへの投票率は、年齢別で見た場合、16歳から24歳が一番高いという正反対の現象が起こった。 若者は夢見がちだが、夢から覚めるのも早い。若者を将来の自分たちの票田とみなし、せっせと耕していたつもりの緑の党にとってみれば、致命的な誤算だった。 若者たちはしっかりと見ていたのだ。緑の党の見果てぬ夢が、誤ったエネルギー政策で電気代を高騰させ、過激な脱炭素政策で産業を破壊し、行き過ぎた自然保護で農家を苦しめ、さらには国民の私生活まで支配し始めていたことを。 そして、その結果としての景気の減退、雇用の縮小、さらには寛容過ぎる難民政策による治安の急速な悪化をいち早く感じたのが、若者たちだった。これから就職し、人生設計をしなければならない彼らが、これ以上、緑の党の夢に付き合えるはずもなく、踵を返したのは当然のことだったかもしれない。 しかし、緑の党はそんな現状を尻目に、ウクライナ戦争が始まると従来の平和主義までかなぐり捨て、「国民がどう思っても構わない。我々は正しいことを断行する(ベアボック外相)」と、ウクライナへの武器の供与と対ロシア徹底抗戦を叫んでいた。施政者が有権者の意思を無視するのは独裁政治だ。