【J1町田快進撃の秘密①】チームの一体感を出すために、黒田剛監督がやったこととは
世代にあわせてアプローチ方法を変える
太田 黒田さんが監督に就任した当時、僕は選手としてFC町田ゼルビアに所属していました。いわば、中から黒田さんを見ていたわけですが、黒田さんは、選手やスタッフだけでなく、会社の社員全員を含め、コミュニケーションの取り方が絶妙でした。(相手の)世代によって、話し方や接し方で意識していることはあるのでしょうか? 黒田 私は30年間高校の教員をやってきて、Z世代(1996年頃~2010年頃生まれ)ともY世代(1980年頃~1995年頃生まれ)とも深く接してきました。だから、世代によって、特徴や思考も、取り巻く環境も違うことは実感しています。たとえば、Z世代は承認欲求が強く、「他人からもっと認められたい」「評価されたい」という思いが強い一方、プライベートと仕事を混同されるのを嫌う傾向がある気がします。対して、Y世代は、高校時代にはきつい練習をさせられたり、ガマンを強いられることも多かった世代だと思います。プロのチームは、その両方が混在しています。それぞれ求めるものも、要望のしかたも違いますから、声のかけ方、アプローチのしかたも変えることが大切だと思います。 ――黒田氏は著書『勝つ、ではなく、負けない。』のなかで、Z世代に対する有効な接し方について「感情、とくに悲劇感をコントロールすることを大切にしてきた」と語っている。たとえば、全国優勝という目標を達成させたいなら、「優勝したら100万円あげる」よりも「優勝できなければ100万円払ってもらう」のように、“失う”という悲劇的な感情を揺さぶるほうが有効だと。それは、多数のZ世代と密接に触れ、特徴を熟知してきた黒田氏だからこそ見いだせたマネジメント法だ。 次回は、「モチベーションのあげかた」について語ってもらう。 黒田剛/GO KURODA 1970年生まれ。大阪体育大学体育学部卒業後、一般企業勤務等を経て、1994年、青森山田高校のコーチとなり、翌年教員、そして監督に就任。以降、全国高校サッカー選手権26回連続出場、 同大会を含む計7回の日本一という偉業を達成する。2023年、FC町田ゼルビア社長、藤田晋氏に請われ、同チームの監督に就任。2023シーズンの優勝、J1昇格に導く。 太田宏介/KOSUKE OTA 1987年東京都生まれ。ジュニアユース年代をFC町田(現・FC町田ゼルビアジュニアユース)で過ごし、2006年、横浜FCでプロデビュー。その後、オランダのSBVフィテッセやFC東京など国内外のチームを経て、2022年、FC町田ゼルビアに加入。2023年のJ1昇格に貢献し、現役を引退。現在、チームのアンバサアーとして宣伝担当を担い、解説やサッカー教室など幅広く活動する。
TEXT=村上早苗